市民社会をつくるボランタリーフォーラムTOKYO 2020

特別養子縁組グミの会

「特別養子縁組グミの会」(以下、グミの会)は、交流会や研修会などの活動を通じて、特別養子縁組*1で親子となった家族の支援を行っています。

特別養子縁組を行い、ご自身も養子を迎えた親(以下、養親)であり、会の事務局長である安藤茎子さんにお話をうかがいました。


はじまりの物語 ~里親からはじまり、養親にも~

私は特別養子縁組以前に、もともとは里親*2として登録をしていました。児童養護施設で学習ボランティアをしていたことも関係していますが、阪神淡路大震災で両親を亡くした子どもの話を耳にしたのがきっかけでした。こういうきっかけで里親になった人は少なくないようです。私たちは当時30代の夫婦で、当初は乳幼児でなく、もう少し大きな子を預かろうと思っていましたが、児童相談所に勧められて結局2歳の子の里親になりました。それから数年たち、その子の親権者の状況が変わったため、里子から養子縁組に変更できるチャンスがあり、特別養子縁組をして、私たちの息子になりました。息子は今では大学生です。


養親と養子への支援がなかった

2011年に社会的養護をテーマとした集まりで、グミの会の世話役の人と出会い、会の活動に関わるようになりました。

グミの会は当初、仲のいい何組かの家族が集まって外出やバーベキューなどの交流を行っていました。当時、里親家庭に対しては、東京都から研修やサロン活動、子どもたち同士の交流プログラムなどの支援がありましたが、グミの会のメンバーのように、特別養子縁組を行った家庭にはそうした支援がありませんでした。縁組した後は実子になるから、という理由です。そのため、特別養子縁組という共通項のある家族が、同じ当事者性を持つ人とのつながりを求めて会に参加し、徐々に会員が増えていきました。現在は45家庭が会員として登録しています。

メンバーが増えるにつれて、子どもに発達障がいや愛着障がい*3などがある家庭の参加も増えていきました。せっかく交流しようと集まっても、子どもたちが走りまわったり、物を壊さないか心配で話しどころではない状況もありました。そうした中で、人づてにつながりのあった二葉乳児院が、施設の地域子育て広場を土曜日と祝日に私たちに使わせてくれることになったんです。子どもたちものびのび遊べておもちゃもあり、親も安心して話ができるようになりました。活動場所の支援を得られたことで、会の活動が安定していくきっかけになりました。


「産みの親と暮らしたかった」思い

グミの会では、家族ぐるみで交流会や研修会などを行っていますが、当事者である子どもたち同士の交流を増やしていくことをとても大切に考えています。「自分だけが特別じゃない」と感じることで、子どもたちの孤立感をなくしていく必要があるからです。産みの親に対して抱いている思いや悩みも、同じ立場の子ども同士だと話しやすいようです。

子どもは、「産みの親のことを聞いたら育ての親が悲しむのでは」と気を遣ってなかなか実の親のことを聞けない場合があります。ですが、基本的には、里親・養親は 育ての親になると決めてから、子どもに何を聞かれても、答える覚悟を持って親になっています。

ただし、子どもが大きくなればなるほど親から話すきっかけがなくなりがちです。子どもから聞いてくれると話しやすい場合が多いと思います。

親については、不妊治療の果てに養子を迎える家庭が多く、最初は幸せいっぱいな状態です。でも、育てていくうちに、子どもがそれまでの成長過程において体験したことからくる影響や、実の親や乳児院職員との別れからくる喪失感等いろいろな問題が出てきます。そうした喪失感に寄り添い、子どもに合った支援の引き出しをもてる親になれるように、学びながら子育てすることが必要になります。

子どもの心の中には「産みの親と暮らしたかった」という思いがあるんだろうなと意識しながら子育てすることが重要です。

子どもにとって自分のルーツを聞ける相手は養親しかいません。親子でそうした話をしっかりできれば、親子関係の絆をより深いものにしていけると思います。


地域の人にも事情を告知

地域の目からすると、養子や里子は目立ちやすい存在です。子どもたちが近所の人から「引き取ってもらったんだから親に感謝しなさい」などと言われてしまうことがあります。実はこれは、子どもたちが一番言ってほしくない言葉なのです。「引き取ってもらいたくてこの家に来たんじゃない」というのが子どもたちの心の叫びなのですから。

こうしたことを踏まえ、子どもの為にも自分たちの状況を近隣の地域の人たちに説明しておくことが必要になります。いわゆる地域告知です。私たちが研修で伝えるのは、地域告知をする際は、「子どもに嘘偽りを伝えるつもりはない。きちっと伝えていくつもり。ただし、年齢によって受け止め方が違う。小さいころは幸せ感から『養子なんだ』と周りの人に言うこともあれば、養子であることをデリケートに思う時期も出てくる。だから地域の人がもし子どもに何か言いたいことがあれば、まずは親に伝えてほしい」と、そこまで地域の人に言うようにしています。子どもが産みの親のことでナイーブになっているときに、安易に「産んでくれたお母さんに会いたい?」などと言われてしまうと、実際にそう思っていても、その気持ちを育ての親に発信しづらくなってしまうことがあるからです。


自分のルーツを知る術の担保を

特別養子縁組の制度は、家庭のない子どもに家族を与えるという面では、児童福祉法の中で最も子どもの利益につながるものだと思います。しかし血縁の関係が諸制度をはじめ文化的な土壌に強く根ざしている日本では、「実の親との断絶」だとか、「その子のルーツをなくさせてしまうのではないか」といった声もあります。そうした意見を考慮して、欧米のように実の親の記録をとっておくとか、支援団体が実の親とつながっていくことで、子どもが求めた時に実の親の情報を出せるような仕組みを整備して、もっともっと安定した制度になってほしいと願っています。


*1 子どもの福祉の増進を図るために、養子となる子どもの実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、実の子と同じ親子関係を結ぶ制度(これに対して普通養子縁組は、子どもと実親との親子関係は解消されず、養子縁組後も継続する)。「特別養子縁組」は、養親になることを望む夫婦の請求に対し、一定の要件を満たす場合に、家庭裁判所の決定を受けることで成立する。(厚生労働省ホームページ)

*2 保護者がいないか、保護者がいても様々な理由から家庭で暮らせない児童(要保護児童)を、養子縁組を目的とせずに一定期間家庭において養育する制度。

*3 養育者からの離別や虐待等によって、乳幼児が適切なスキンシップやコミュニケーションを得られなかった結果、情緒が不安定になったり、対人関係において、うちとけたり、甘えたり、信頼関係を築くことなどがうまくできなくなる状態。


特別養子縁組グミの会

http://blogs.yahoo.co.jp/guminokai

特別養子縁組で親子になった家族の会として、2011年4月10日に発足。年4回、交流会や学習会による「集い」を中心に行いながら、会員のつながりを大切にしている。

2018年11月 グミの会の有志と支援者でNPO法人特別養子縁組支援グミの会サポート設立。特別養子縁組グミの会は任意団体として継続している。


キーワード社会的養育、特別養子縁組

メンバー 当事者家族

活動内容 交流会、研修会、会報をはじめとした情報発信

活動エリア 東京

相談 あり

集まれる場所 あり

他団体との連携 あり

連絡先

特別養子縁組支援グミの会mail:guminokai@yahoo.co.jp

NPO法人特別養子縁組支援グミの会サポート電話:050-5215-0282

mail:gumisapo@yahoo.co.jp活動拠点:グミサポフレンズ

〒170-0014東京都豊島区池袋1丁目2番6号‐510

https://www.facebook.com/gumisapo/

*『ネットワーク』351号より(2017年12月発行)