新型コロナウイルス NPOから寄せられる相談とQ&A(相談の窓口から)

未払金・リースのあるNPO法人の解散
~コロナ禍でのNPO相談事例1~

弁護士 日向寺 司

1. 相談事例1:
未払金・リースのあるNPO法人の解散てどうなるの?

コロナ禍の影響で、NPO法人を畳もう・解散しようと検討している方からの相談が増えていると伺いました。

「解散しようかな」と思ったときに浮かぶ疑問に関するものが多いようです。

例えば、


①未払金(や、借入金)があるが、このまま解散したらどうなるか

②そもそも、負債がある状態で解散する場合、どういうことが起きるか(通常の解散とどう違うか)

③このまま解散したら、リース契約はどうなるかといった相談です。


今回は、①~③の質問にお答えします。


2. 未払金・借入金のある場合でも解散できるか。

まず、①と②について。

解散をする場合でも、未払金や借入金があれば、それを支払う必要があります。(反対に、支払いを受けるべき債権があれば、回収しなければなりません。)

債務の弁済、債権の回収等の作業を行ったうえで、残った財産(残余財産といいます)を、定款で定める帰属先へ引き渡します。そうして清算が終わって(清算結了といいます)、その登記をすることで、ようやく、法人格が消滅します。

問題は、債務超過の場合、つまり、法人のプラスの財産を集めても債務の弁済ができないとき=残余財産がないときです。

解散後、債務超過であることが明らかになれば、清算人は直ちに破産申立を行わなければなりません。

場合によっては、代表理事個人の破産申立ての必要性が出てくることもありますので、債務超過の法人の場合は、解散決議の前に、弁護士に相談することをおすすめします。

というわけで、相談事項①と②についての回答は、「未払金や借入金は、支払えるなら、解散に支障はない。支払えないのであれば破産しなければならなくなるため、解散決議前に弁護士に相談すべき。」となります。


3. リースがある場合の解散

続いて、相談事項③です。

リース契約の性質(契約解釈)によりますが、代金を借り入れているのと同じと考えていただければ間違いが少なくてすみます。

そうすると、相談事項①②と同じ結論、「リース残代金を支払えるなら解散に支障はない。支払えないのであれば破産しなければならなくなるため、解散決議前に弁護士に相談すべき。」となります。ただし、リース業者との交渉の余地もありますので、そのあたりも踏まえたアドバイスを弁護士から受けることになるでしょう。


4. 一言まとめ

債務超過の状態での解散を検討する場合は、注意してくださいませ。

なお、解散なんて面倒と感じられる方もいらっしゃるのですが、①放置された法人でも事業報告書等の提出義務は引き続き残り、それを怠って設立認証が取り消されると、その法人の役員は、他のNPO法人の役員になれません(2年間)し、②放置される法人が少なくないという、NPO法人制度への批判がなされている状況があることから、NPO法に則って適切に解散をして頂きたいところです。


* 《関連条文》 解散決議:NPO法31Ⅰ①、届出:31Ⅳ、清算法人能力:31の4、清算人:31の5、債務超過破産:31の12

* 本記事は、2020年6月13日の「未払金・リースのあるNPO法人の解散 《コロナ禍でのNPO相談事例1》」(日向寺司氏のnote記事)の内容を著作者の許諾を得て転載したものです。