(2010年11月30日 / 朝比奈ゆり )
トーキョー協働空間見学ツアー訪問レポート②
芝の家
- キーワード
- 協働空間 、 芝の家 、 港
まちの中で人びとがふれあい、つながる場づくりの実践が、
ボランティアや市民活動団体、NPOの手で広がっています。
東京ボランティア・市民活動センターでは、こうした場所・拠点を『協働空間』と呼びながら、
現場見学ツアーを開催しています。
その現場レポート1回目として、9月8日に見学した『みんなの実家@まちや』のレポートです。
「芝の家」(港区芝) 訪問

9月9日(木)に、「芝の家」を訪問しました。一般の参加者12名と、TVACスタッフ3名でうかがいました。「芝の家」はJR田町駅から歩いて10分程、オフィス街を抜けた先にあります。家や店舗が混在する「芝の家」の周辺は、軒先に植木鉢が並んでいるなど、ちょっと懐かしい風景が残されています。ちょうどお昼時、お勤め人たちが昼食を求めていっせいに街へ繰り出し、街には活気が感じられました。
「芝の家」は、事務所だった建物の1階を改修し、2008年秋にオープンしました。木製の引き戸を開けると、落着いた風合いの板の間が広がります。奥の白壁の前には、ゆったりとしたソファと木製のベンチ、窓からは夏の日が差し込んでいます。そのガラス格子の窓は外側に腰掛けを備え、まるで縁側のように、通りの往来と部屋で休む人をむすびます。「ようこそ!」とまもなく、スタッフが出迎えてくれました。
港区と、大学と、地域の協力体制

「芝の家」は、港区芝地区総合支所による「昭和の地域力再発見事業」として、慶應義塾大学が受託し、地域と協力しながら運営しています。“子どもたちの成長を地域で見守り、井戸端会議では住民同士の親しい会話がある・・・そんな昭和30年代にあったようなあたたかい人と人とのつながりの創生をめざすこと”を目標にしているそうです。
月〜土まで、開いている時間内は、誰でも自由に出入りできますが、曜日ごとに特徴をもたせています。月・火・木(11時〜16時)は、ゆっくりとくつろげる“コミュニティ喫茶”。セルフサービス形式でお茶が楽しめます。水・金・土(13時〜18時)は、ケン玉で遊んだり、チャンバラを教わったりと、子どもたちが思いっきり、飛びまわれる日です。
「芝の家」の日々の運営は、慶應義塾大学の教員や学生などのスタッフが常駐し、近所の人びとは、それぞれの関心に従ってサポートしています。見学に訪れた日は、お隣のTさん、音楽好きのTさん、三田育ちのMさんなどがそろい、私たちからの質問にもこころよく、答えてくださいました。
いろんな人が、一緒にいられる場所を
「ここはただひたすら、居てもよい場所。いろいろな人が、一緒に居られるにはどうしたらよいかを、大切に考えています」と芝の家のリーダー、坂倉杏介先生は言います。曜日によって、大人向けと子ども向けと、趣きを変えているのも、そのために考えられた工夫のひとつです。
閉館後には、その日の当番だったスタッフが全員で一日をふりかえり、出来事を共有する時間をつくっているそうです。さまざまな来訪者を気持ちよく迎えるために、スタッフ自身が心をときほぐし、備える機会となっていると感じました。
生きにくさを感じ、孤立してしまう人が増える社会にあって、「人間関係のあることが、人を元気にさせる力になる」ことを、「芝の家」の試みは、実証しているようでした。