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(2011年12月4日 / 吉田真也 )

TVACレポート

東京ボランティア・市民活動センター
「災害ボランティア・コーディネーター養成講座〜応用編〜」を開催しました

キーワード
災害ボランティア・コーディネーター 、 地域防災 、 防災講座 、 災害ボランティアセンター設置・運営マニュアル

東京ボランティア・市民活動センターでは、災害や防災に関する平常時の活動や被災地支援の場面で核となって動くことができる人材を養成することを目的に、社会福祉協議会(社協)やNPOのスタッフを対象とした講座を行っています。ここでは、2011年11月30日に開催した講座のもようをレポートします。


今回のテーマは…

今回のテーマは、「被災地支援を経験したいま、プログラムづくりに求められる視点とは何か?」です。今回の被災地支援活動を通して得た貴重な経験をどう日常的な活動に生かしていくかを、参加者全員で考えます。


画像 宮崎さんの事例発表

日野市ボランティア・センターの取り組み

まず事例発表として、日野市ボランティア・センターの宮崎雅也さんに地元のNPOと協働して行った気仙沼・大島支援プロジェクトの概要と、今後の防災講座の展開などについてお話しいただきました。講座は親子で参加できるようなプログラムになっており、なかなか魅力的です。が、「どれだけ参加者が集まるか」「講座終了後にグループ化を目指したいが、どうすれば継続性を持たせられるか」といったあたりが課題だと宮崎さんは言います。今日のワークでその解決方法のヒントは出るのでしょうか……?

グループワーク「プログラムづくりに求められる視点とは」

後半は、「講座づくり」と「災害ボランティアセンターのマニュアルづくり」のテーマで2チームずつに分かれてワークを行いました。ファシリテーターの菅野道生さん(東日本国際大学准教授)にワークのポイントを説明してもらいました。

画像 ファシリテーターの菅野さん

「参考資料は山ほどあるので、マニュアルや講座の“カタチ”をつくるのは簡単です。でもそれがじっさいに役に立つかは未知数。じゃあなんでマニュアルや講座に取り組むの? というところから考えます。講座やマニュアルの現状の課題は? その課題をどのようなねらいや目的をもって打破しますか? 企画上の工夫は? はじめの一手をどう打つ? ……といった点をグループワークで詰めていきます」。


個人ワークから挙がった現状の課題はさまざまです。マニュアルでは、作ったら作りっぱなし、じっさいに読んだことがある職員がほとんどいない、所在も不明……などなど。講座開催では、参加者の年齢層に大幅な偏りがある、いつも同じようなメンバーなどが挙がりました。さらに、災害対応に関する事務局内の共通理解がない、社協だけで進めてしまうため社協が災害に取り組むことを外部の人たちがまったく知らないなどもありました。

課題は山積していますが、グループごとにねらいを絞ってさらに議論を進めます。各グループの発表は下記の通りです。

画像 グループワークのようす

各グループからの発表

◆講座チームA

まずは市民の意識を向上させて地域力アップ! 小さなエリアごとに講座を開催。企画段階から市民と一緒につくることでお互いの認識のズレを防ぐ。災害・防災に関心の高い人を巻き込む。モデル地区をつくる。長いスパンで考える。


◆講座チームB

防災に限らず普遍的な内容としての発表。現状の課題は、講座がその場限りで終わっていること。ではどうするか? 日常の地域のつながりづくりに広がっていくような取り組みにする。もともと地域にある活動やネットワークを土台にして楽しい企画にする。市民と一緒に企画をつくる。

画像 講座チームBの発表

企画づくりの事例として、災害講座修了生と次の講座の企画を一緒につくるという、いたばし総合ボランティアセンターの取組み紹介がありました。


◆マニュアルチームC

わかりやすい災害ボラセンマニュアルがあれば、災害時に頼ってくださいと大きな声で言える。はじめの一手はランチミーティング。主婦層にアピールしていきたい。マニュアルのキーワードはアメーバ。大枠だけ決めて柔軟に運用していくことがポイント。


◆マニュアルチームD

課題は災害対応に関する内部の共通理解がないこと。行政のマニュアルと乖離していてもダメ。災害VCマニュアルでも他部署のスタッフに入ってもらい、一緒にわかりやすいものをつくる。作ったものは全職員に見てもらいフィードバックを得る。


ファシリテーターからのコメント

発表を踏まえ、菅野さんからは次のようなコメントをいただきました。

発表を聞いて感じたのは、社協(もしくは担当部署、担当者)だけでつくらず、「参加型」でつくるという視点。たとえ講座が失敗しても、マニュアルが役に立たなかったとしても、一緒につくってきたというネットワークは残ります。


ただし、参加型は「効率性」とのトレードオフ。効率性を重視する立場の人とはバッティングします。参加型は先が読めないかもしれないし、時間がかかる場合もある。しかし効率性を重視すればネットワークは残らない。災害・防災の取り組みはもちろん、「地域」のことを考えたときにどちらを選択すればいいのかは、自ずと答えが出てきます。


内部の問題に対しては、担当部署だけでなく「組織として」やること。スタッフ全員が参加する研修や学習の機会を利用できればいいでしょう。組織のなかに災害に関心のない人も、正直いると思いますが、でも、みんなで取り組んでいくことが大切です。


さらに、みなさんから出ていたなかでは、継続性の視点もありました。楽しい、おもしろい、おいしい(焼き芋とか)といった仕掛けもポイントかなと思いました。


参加者のみなさんには短い時間でのワークを強いることになってしまいましたが、みなさん積極的に参加いただいて集中した議論ができたように思います。


次回は、浦安市社会福祉協議会の板橋純三郎さんにお越しいただき、災害ボランティアセンターのじっさいについてお話しいただくとともに、今回のワークの続きを行い、さらに考えを深めていきたいと思います。


参加者アンケートより

「『組織として』『プロセス』など、マニュアルを作成していくうえで大切なことを気づかされた」

「社協内部でいかに組織的にできるか。重要なことだけど日頃手を抜きがちなので…あらためてボランティセンターの動きについて内部に向けても見える化を図っていきたいと思います」

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