(2016年10月9日 / 相談担当 )
TVAC相談窓口から
1年間の相談を振り返って(2015年度)
- キーワード
- TVAC 、 相談 、 NPO 、 ボランティア 、 市民活動 、 当事者活動 、 セルフヘルプグループ 、 災害
相談の半分は「NPO」から
1年間の相談件数(14971件)のうち、7611件がNPOからの相談です。
「NPO」にはNPO法人だけでなくボランティアグループ(VG)や地域の団体など、法人ではない非営利の市民団体(任意団体)も含まれています。NPOからの相談は、全体の約50%を占め、個人からの相談(3261件)の倍以上の件数です。
個人からの相談がNPOからの相談に移行・発展することがあります。例えば「ボランティアをしたい」と(個人で)来所した方が、参加したボランティアを通して新たな「やりたいこと」を見つけ、思いを同じくする仲間と任意団体をつくり、数年の活動を経て法人化する……などのパターンです(任意団体のまま息の長い活動を続ける団体もたくさんあります)。
TVACには個人から法人まで幅広い方から多様な相談が寄せられるとともに、継続的な相談も多くあります。
相談者の属性としては、NPO・個人に次いで、ボランティアセンターなどの市民活動を推進する機関(市民活動推進機関)からの相談(1692件)、企業からの相談(1544件)、その他、社会福祉施設や、行政、学校、マスコミ、保健医療機関などからの相談が届いています。
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相談の半分は「電話相談」
相談方法は、約50%(7250件)が電話によるものです。来所による相談は32%(4787件)、メールによる相談も毎年20%程度寄せられています。「その他」にFAXや手紙などが含まれ、2015年度には、刑務所から「出所後の生活が不安」、「出所したらボランティアをしたい」などのお手紙が複数届きました。
個人からの相談
個人からの相談のうち、一番多いのが「活動や運営に関するもの」(669件)です。「落語のボランティアをしているが活動先を増やしたい」、「難病の子どもたちのために仲間と一緒に何かしたい」、「ボランティア活動先から交通費を受け取ってもいいのか」、「動物の命を守るNPOをつくりたいが資金やメンバーはどうやって募ればいいのか」、など多岐に渡る相談が寄せられています。
次いで多いのが「ボランティアをしてみたい」などボランティア活動に関する相談です。TVACには、これまでボランティア活動をしたことがない方からの相談が多く寄せられています。
その他、NPOや市民活動全般に対する疑問や質問、自分自身がメンバーとして関われる団体を探している相談、生活上の困りごとを解決してくれる団体の情報を求める相談、「自分の困りごとの相談をしたい」という相談が年々増加しています。
団体からは「活動」や「運営」の相談が多い
団体から寄せられるもっとも多い相談は、「活動や運営に関わる相談」で、全体の約67%(7883件)でした。団体とは、企業や行政、社会福祉施設、市民活動推進団体、学校、マスコミなど多岐にわたりますが、NPOからの相談が全体の7割(5625件)を占めています。
具体的には「団体を法人にしたい」、「自分たちに合った法人格を選択したい」など組織のカタチに関する相談、団体の活動に「助成金を活用したい」、「寄付を募る方法を知りたい」など資金に関する相談、「集まらない・続かないのが悩み」というボランティアの募集と受入に関する相談、「この件は、誰が・何の会議で決めればいいのか」という団体のデザインや意思決定に関わる相談など、多様な相談がありました。
2015年度は、法人格の有無や団体の規模に関わらず「長年活動してもらっている“有償ボランティア”、このままでいいのだろうか」など労務に関する相談が増加した印象です。また「そろそろ引退したいが、後継者がいない」、「メンバー間のトラブルで活動がすすまない」など、団体内部に関する相談も多く寄せられました。さらにマイナンバー制度に関する問い合わせもありました。
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NPO法人関係の相談 4687件
NPO法人に関する相談は全体の31%(4687件)でした。設立に関する相談では「議決権を持つメンバーを自分たちで選びたい(「社員の資格の得喪」に条件をつけたい)」という相談が増加しています。また、設立後の法人から定款やNPO法の「意味」についての問合せや、資金調達に関連して融資の相談、解散手続きに関する相談もありました。解散の理由としては経済的なもの、担い手の高齢化・不足、他の法人格あるいは任意団体への移行などがありました。
2015年度は、「会計書類の書き方」や「任意団体からの財産の引継ぎについて」、「役員の変更に関する手続きの順番」などが多く寄せられました。また、バーチャルオフィスやバーチャル会議を活用しての法人運営など、新しい相談がありました。認定NPO法人に関しては、4月に仮認定の駆け込み相談が増加、クラウドファンディングにおける収入が「寄付としてみなされるか」などの相談があります。
「ボランティアしたい」 相談 622件
「ボランティアしたい」「活動先を探している」相談は、622件寄せられています。過去13年間で最も少ない件数となりました。ボランティアを募集している施設やNPOがチラシやウェブサイト等で直接呼びかけるケースが増えていること、さらには「ボランティアしたい!」と思ったときにインターネットで探す方が増えていることなどが背景にあると考えられます。
一方でTVACに相談にいらっしゃる方のうち3人に1人が「何かしたいけど、どんな活動があるかわからない」、「やりたいことが具体的に決まっていない」、「探し方がわからない」とお話されます。ボランティア活動を探すときには、その活動内容だけでなく、活動先の雰囲気もとても大切な情報です。1日体験活動や、事前説明会には比較的気軽な気持ちで参加できるため、自分に「合う・合わない」を体感するためにもそのような機会を活用する方も増えています。また、最初から長く続けられる先をじっくり探すのではなく、多様な活動を体験する中で、本当に関心が持てるテーマや活動を探す方法もあります。
2015年度は、仕事と両立できる活動(週末や夜間など)を探す方や、家族と一緒に参加できるプログラムを探している方が多くいました。TVACでは、ボランティア活動をしたいと思ったきっかけ、趣味や得意なもの・好きなこと・経験やスキルなどを伺い、多様な活動の例をご紹介しながら、活動のイメージの具体化と、「自分に合った活動の探し方」などの情報提供をしています。
多様な「当事者活動」
2015年度は、前年度に引き続きさまざまな生活課題や困難を抱えた方々の活動、あるいは同じ体験や状況を共有した当事者自身による活動(自助グループ)の設立・運営相談が多く寄せられた1年でした。資金や活動場所に関する相談の他、グループを探す相談や立ち上げに関する相談が多く寄せられた年でもありました。
「当事者活動を始めたい」相談の最初には「ボランティアしたい」、「仲間と出会いたい」など、「当事者性」を通して社会との接点やつながりをつくりたい、経験を生かして社会や仲間に貢献したいという思いを語る方が多くいらっしゃいます。そして、自分で仲間を集めようとしても「自分と“同じ人”になかなか出会えない」という悩みを耳にすることが多くありました。なかでも複数のテーマが重なり合う方や、見えにくくわかりづらい「生きづらさ」を抱える方、既存のグループが少ないあるいは存在しない新たな「当事者性」に関するもの、制度の狭間や既存の「カテゴリー」に当てはまらないグレーゾーンにある方々からの相談は、共に模索しながらの相談対応になることが多くありました。その一方で当事者活動を始めて「最初の1人に出会えたときの安堵」を語られる方が多くいらっしゃいました。
すでに活動しているグループからは、「活動と生活のバランスが難しい」、「自分がほしくてつくったのに、ホストの役割を求められて疲れてしまった」、「“分かち合い”の先の活動を始めたい」という相談もあり、活動の見直しや拡大、時には休止の判断をする団体も複数ありました。
災害に関するボランティア活動
2015年度、噴火や「関東・東北豪雨」など大きな災害が日本各地で発生しました。TVACでは被害や支援の状況、ボランティアの受入や活動に必要な情報を、ウェブサイトなどを通じて随時発信しています。災害が発生すると多くの方から問合せが寄せられます。その中で被災した地域に「ボランティアに行きたい」という相談は41件で、2014年度より10件増加しています。その他、「現地の状況が知りたい」、「どのようなニーズがあるのか」、「物資や寄付を送りたい」などの声が寄せられています。
NPOなどのグループからは「専門性や普段の活動のノウハウを生かした支援をしたい」、企業からは「商品を寄付したい」、「専門性や資源を生かしてできることはないか」などの相談が届いています。
TVACではさまざまな相談に対応できるよう、2015年度、他の専門機関等の研修に積極的に参加したり、担当内の勉強会を実施するなど、相談員のスキルアップに取り組みました。
また、市民からの「困りごと」の相談、当事者活動に関わる相談の増加などを受け、講座やイベントを通して、まだ知られていない社会課題や光の当たりにくいテーマに関して社会に対して情報発信の機会をつくりました。
TVACでは、今後も相談内容の傾向から団体の抱える課題や市民の活動ニーズを把握し、市民活動を取り巻く状況の変化を読み取りながら、センター事業に反映させていきます。
(相談担当専門員 森玲子)