(2018年3月23日 / 相談担当 )
TVAC相談窓口から
1年間の相談を振り返って(2016年度)
- キーワード
- 相談 、 NPO 、 ボランティア 、 報告
相談の傾向
◆◇ NPOからの相談が最も多い
相談件数(13995件)のうち、NPOからの相談は47%(6614件)を占め、個人からの相談(3567件)より3000件以上多く寄せられています。ここでの「NPO」にはNPO法人だけでなくボランティアグループ(VG)や地域の団体など、法人ではない非営利の市民団体も含まれています。
NPOに次いで個人からの相談、次にボランティア・市民活動センターなどの市民活動を推進する機関(推進団体)からの相談が1551件でした。この傾向はここ数年変わっていませんが、2015年度に比べ個人からの相談が若干増加しました。その他、企業、施設、行政、学校、マスコミなど多様な機関から相談が寄せられています。
◆◇ 電話・来所での相談が多い
「その他」にはTVACスタッフが外部の講座や会議に行った際に受けた相談が300件ほど含まれています。近年、NPOや他の推進団体、企業などと協働で事業を進めることが増加しており、つながりが増えることで相談を受ける機会も増えていることがうかがえます。
多岐にわたる「個人からの相談」
個人からの相談(3567件)のうち、「活動や運営に関する相談」が2015年度より200件以上増加して約900件寄せられました。団体を立ち上げたいなどの相談のほか、例えば「自分の特技を活かして社会に貢献する活動をはじめたい」、「長年ボランティアをしているが、交通費を負担に感じるようになった」、「NPO法人の設立に興味がある」など多岐に渡る相談が寄せられています。
次いで多いのが「ボランティアをしたい」相談で、小学生からシニアまで幅広い層から相談が寄せられました。最近はインターネットなどで多様なボランティア情報が発信されている一方、「どうやって選んだらいいのかわからない」、「はじめてのボランティアに不安がある」などのお悩みを抱える方も少なくありません。TVACでは、活動したいと思ったきっかけや、希望する活動分野、趣味・特技などのお話をうかがいながら活動先に関する情報提供をしています。
「その他」に分類されているもののうち約9割が「話したい」という主旨のご相談でした。
団体からは「活動」や「運営」の相談が多い
団体からの相談は、10428件寄せられました。団体とは、企業や行政、社会福祉施設、市民活動推進団体、学校、マスコミなど多岐にわたりますが、そのうちNPOからの相談が全体の6割を超えています(6614件)。
団体から寄せられるもっとも多い相談は、「活動や運営に関わる相談」で、全体の約63%(6554件)でした。
具体的には「団体を法人にしたい」、「自分たちに合った法人格を選択したい」など組織のカタチに関する相談、団体の活動について「助成金を活用したい」、「寄付を募る方法を知りたい」など資金に関する相談、「集まらない・続かない」ボランティアの募集と受入に関する相談、「誰が・何の会議でなにを決めればいいのか」という組織づくりや団体の意思決定に関わるものなど、多様な相談がありました。さらに「イベントに人が集まらない」、「もっといろいろな人に団体のことを知ってほしい」など、広報に関する相談も多くあります。
また、2016年度の特徴として、法人格の有無や団体の規模に関わらず「いまやっている事業に関係する法律があるのではないかと心配になった」、「“有償ボランティア”をお願いしているが、このままでいいのだろうか」など法務や労務に関する相談も多く寄せられました。NPOに対する社会の認知や理解がすすむにつれ、団体側にも法令に則った適切な運営をしていこうという意識の高まりを感じます。
また「会員が増えたことで合意をとるのが難しくなった」、「会議に人が集まらない」など、団体内部に関する相談も多く寄せられました。さらにマイナンバー制度や改正個人情報保護法に関する問い合わせもありました。
「ボランティアしたい」相談 件数が大幅に増加 969件
NPO法人関係の相談 設立から解散まで 4064件
NPO法人関係の相談は4064件でした。これは相談件数全体の約30%にあたります。「NPO法人の要件を知りたい」、「手続きを知りたい」という設立に関するものから、事業報告書の作成や会計処理について、定款や役員を変更した時の手続きなどの運営に関するもの、そして「事業を続けることが難しくなったので解散をしたい」という団体の終わりに関するものまで幅広く寄せられました。
最近は、「NPO法人と一般社団法人で迷っている」という相談、これまで活動経験がない状態から「とにかく法人をつくりたい」という相談、長年企業で働いてきた方からの「企業とNPO法人との違いに戸惑っている」などの相談が増えています。また、さらには、2016年6月にNPO法が改正されたことに伴う定款変更等に関する相談もありました。
多様な当事者と当事者団体からの相談
2016年度も、さまざまな状況にある「当事者」ご本人や当事者団体からの相談が多く寄せられました。2016年度の特徴としては、さまざまな病気・難病の方からの相談が増えたことと、幅広い意味での「当事者」の相談が寄せられたことにあります。例えば、制度の狭間や既存の「カテゴリー」に当てはまらない状況の方(1年の半分だけひきこもり状態にある人たちのグループなど)、複数のテーマが重なり合う方(発達障害の親からのネグレクトにあった人たちのグループや、セクシュアルマイノリティで精神疾患をもつ人たちのグループなど)、子どもの頃の困難な体験や、見えにくくわかりづらい「生きづらさ」を抱える方(近親者からの性的暴力を受けた方のグループなど)、既存のグループが少ないあるいは存在しない新たな「当事者性」に関するもの(特別養子縁組の会やカサンドラ症候群のグループなど)、また「ずっと精神障害と言われていたが最近発達障害と診断された」、「自閉的傾向があると思っている」、「いつもではないが、ひきこもりがちな生活をしている」など特定のテーマになりにくい状況の方から様々な相談が寄せられました。
個人からは「気持ちを話したい」、「自分にぴったりくるグループを探したい」、「自分にもできるボランティアを探している」、「自分の経験を活かして講演したい」などの相談が寄せられました。さらには、自分と同じ課題や困難を抱えた人、あるいは自身の体験や状況を共有できる「仲間と出会いたい」とグループを立ち上げる相談もありました。
すでに当事者活動をしている団体からは154件の相談がありました。特に、資金・活動場所・組織運営に関する相談が多く寄せられています。これらのなかには当事者団体以外の市民活動団体と共通するものも多くありますが、一方で当事者団体ならではの難しさもみられました。特に、社会の資源が一般のNPOやボランティア団体に比べ利用しにくい状況がうかがえました。例えばメンバーが多地域から集まっていたり、匿名やニックネームで参加をしているグループなどでは、構成メンバーの条件により低額で使用できる公的施設が使えないことも多くあります。また対象者が少ないことで、助成金等の「対象外」となってしまった団体もありました。
また、当事者団体の場合、一部のメンバーが運営の要となっていることも多く、そういった立場の方からは「活動をはじめたら相談がはいるようになって、無視できないが、正直聴くのがしんどい」、「たくさんの仲間が求めているのに、思うように動けないことが悔しい」、「メンバーの求めているものが違ってきて、団体を2つに分けた方がいいのか悩んでいる」などの声がありました。
災害に関するボランティア活動
2016年度には、4月の熊本地震、8月の台風9号・10号、10月の鳥取地震など、大きな災害が日本各地で発生しました。TVACでは被害や支援の状況、ボランティアの受入や活動に必要な情報を、ウェブサイトなどを通じて発信していましたが、災害が発生すると多くの方から支援に関する問い合わせや相談が寄せられます。その中で被災した地域に「ボランティアに行きたい」という相談は180件で、2015年度より140件ほど増加し、「災害ボランティア」への関心の高さがうかがえました。
特に熊本地震では、本震のあった4月16日より8月までの間に合計402件の問合せ・相談がありました。「ボランティアに行きたい」、「物資や寄付を送りたい」などの声の他、現地での移動方法や宿泊場所、携行品、ボランティア保険についてなど具体的な情報を問い合わせる電話も多くありました。NPOなどのグループからは「活動のノウハウを生かした支援をしたい」、「うちの団体の専門性や資源が役立つことはないか」、企業からは「商品を寄付したい」などの相談が届きました。また多くのメディアからも「状況がしりたい」と問合せがありました。TVACでは、NPOや関係団体、行政機関などと密に連携し、最新で正確な情報の共有を心がけながら情報提供と、相談対応をおこないました。
2016年度、TVACではさまざまな相談に対応できるよう、外部研修への参加や、勉強会の開催、他機関への訪問などを通して相談員のスキルアップに取り組みました。また、当事者活動に関わる相談の増加を受け、団体同士が知り合える機会を設けたり、情報誌等を通じて多様な当事者活動の存在を社会に発信する取り組みを開始しました。TVACでは、今後も相談内容の傾向から団体の抱える課題や市民の活動ニーズを把握し、市民活動を取り巻く状況の変化を読み取りながら、センター事業に反映させていきます。
(相談担当専門員 森玲子)