ボラ市民ウェブ
TVACニュース

(2018年3月31日 / 相談担当 )

TVACレポート

TVAC相談窓口から
1年間の相談を振り返って(2017年度)

キーワード

TVACの相談

東京ボランティア・市民活動センター(TVAC)には、市民の方(個人)、ボランティアグループ、市民活動団体、NPO法人、社会福祉施設、企業、行政機関、市民活動推進団体、マスコミなど、さまざまな方から多数のご相談・お問い合わせが寄せられています。

2017年度の相談件数は14127件でした。概要をご紹介します。

相談の傾向

◆◇ NPOからの相談が5割 

相談件数(14127件)のうち、NPOからの相談は50%(7113件)でした。ここでの「NPO」にはNPO法人だけでなくボランティアグループ(VG)や地域の団体など、法人ではない非営利の市民団体も含まれています。

NPOに次いで個人からの相談(3491件)、ボランティア・市民活動センターなどの市民活動を推進する機関(推進団体)からの相談(1727件)が多く寄せられています。その他、企業、施設、行政、学校、マスコミなど多様な機関から相談が寄せられています。

図1

相談者属性

NPO   7,113件(50.3%) ※1

個人   3,491件(24.7%)

推進団体 1,727 件(12.2%)

企業 1,039件( 7.4%)

その他  757件(5.4%) ※2

1 NPO…ボランティアグループ、市民活動団体、NPO法人など非営利の市民団体

2 その他…福祉施設、行政機関、学校、マスコミなど

◆◇ メールと来所相談が増加

相談方法としては、電話・来所・メール・手紙・FAXなどがありますが、最も多いのが電話によるもので全体の半分以上を占めています(7422件)。電話では「団体の情報を探している」、「ボランティアをしてみたい」、「NPO法人の設立要件を知りたい」などの比較的簡易な問い合わせに対応しています。同じく、メールでも相談が寄せられていますが、基本的には継続している案件についての者が中心となっています。

多岐にわたる「個人からの相談」

ボランティアをしたい

○○な団体を探している

自分と同じ経験をした人と出会いたい

団体を作りたい

NPOについて知りたい

困りごとの相談をしたい

話をきいてほしい・話しがしたい

◆◇幅広い年齢層からの相談

相談者全治のうち個人からの相談は約25%、団体からの相談は約75%でした。このうち個人からは3491件の相談が寄せられました。内容は「活動や運営に関する相談」が最も多く、個人からの相談の1/3以上を占めます。この相談は2016年度から350件以上増加していて、ここ数年、毎年増加傾向にあります。「仲間と一緒に新たな団体を立ち上げたい」、「これまでの活動をNPOにしたらと勧められた」などの相談の他、例えば「一人でやっている活動を組織化したい」、「現在参加しているグループについて」など幅広い相談が寄せられています。

次いで多いのが「ボランティアをしたい」相談で、「夏休みにボランティアがしたい」、「不規則勤務だが空いた時間にできる活動を探している」、「仕事をリタイアしたのでボランティアをはじめたい」など、小学生からシニアまで幅広い層から相談が寄せられました。

「その他」に分類されているものの中には「話を聞いてほしい」、「話がしたい」という趣旨のものが多く含まれ、全相談においても1割を占めています。

図2

相談内容

活動や運営に関わる相談 1,248件(35.8%)

ボランティア活動希望 468件(13.4%)

団体や社会資源の情報提供 361件(10.3%)

その他 1,414件(40.5%)

 

団体の相談

◆◇活動・運営相談が9割

ボランティアを募集したい

運営を担うメンバーを増やしたい

会則のつくり方を知りたい

活動する資金が集まらない

会計処理のやり方がわからない

助成金を探している

団体の法人化を検討している

 

団体からの相談は、10636件寄せられました。団体とは、企業や行政、社会福祉施設、市民活動推進団体、学校、マスコミなど多岐にわたります。そのうち約7割(7113件)がNPOからの相談です。

団体から寄せられる最も多い相談は、「活動や運営にかかわる相談」で、全体の約9割を占めます。具体的には「団体を法人にしたい」、「自分たちに会った法人格を選択したい」など組織のカタチに関する相談、団体の活動について「助成金を活用したい」、「寄付を募る方法を知りたい」など資金に関する相談、「集まらない・続かない」ボランティアの募集と受入に関する相談、「誰が・何の会議でなにを決めればいいのか」という組織づくりや団体の意思決定にかかわるものなど、多様な相談がありました。さらに「事務所として使えるスペースを探している」、「体育館設備のある会場を使いたい」など、場所に関する相談も多くあります。

また、2017年度の特徴として、法務や労務に関する相談が多く寄せられました。労務に関しては「スタッフに人件費を支払う時の手続き」や「業務委託と雇用の違い」などが多く、法務に関しては「企業との契約」や「役員の責任の範囲」などの相談が寄せられています。NPOに対する社会の認知や理解が進むにつれ、団体側にも法令に則った適切な運営をしていこうという意識の高まりを感じます。

「ボランティアしたい」相談  

◆◇分野は多岐にわたる 

2017年度、「ボランティアしたい」、「活動先を探している」相談は、個人・団体合わせて710件寄せられています。ここ数年、600件程度で推移してきている中で100件ほどの増加となりました。ボランティア活動の分野は、社会福祉、国際、医療、環境、災害、教育、まちづくりなど多岐にわたります。個人からの「ボランティアしたい」の3割以上が「何かしたいが、分野は決まっていない」、「まずはどんな活動があるのか知りたい」というものでした。最近はインターネットなどで多様なボランティア情報が発信されている一方、どうやって選んだらいいのかわからない」、「初めてのボランティアに不安がある」などのお悩みを抱える方も少なくありません。また、オリンピックを機にボランティアに関心を持った方から「今できる、語学を生かした活動はあるか」、「まずはスポーツのボランティアをしてみたい」などの相談も寄せられました。

団体からの「ボランティアしたい」相談のうち最も多いのが、企業からの相談(201件)です。「社員が参加できるボランティア活動を探している」、「社員が活動に参加しやすくなる仕組みを作りたい」など、多くの企業からの相談が寄せられています。

NPO法人関係の相談

◆◇法改正と認定の更新が旬

NPO法人を設立したい

自分たちに合った法人格を考えたい

総会と理事会の役割を整理したい

役員が関係する団体との関係について

NPO法改正について知りたい

理事が変更する時の手続きを知りたい

認定NPO法人の更新について

NPO法人関係の相談は4873件でした。これは相談件数全体の35%にあたります。「NPO法人の要件を知りたい」、「手続きを知りたい」という設立に関するものから、事業報告書の作成や会計処理について、定款や役員を変更した時の手続きなどの運営に関するもの、そして「事業を続けることが難しくなったので解散をしたい」という団体の終わりに関するものまで幅広く寄せられました。なかでも、特定資産や年度をまたいだ会計処理、NPO法人家計基準の改正に伴う寄付金の受入に関する会計処理、役員が関係する団体との取引などNPO法人特有の相談の他、会員の除名や役員の解任などトラブルを背景に持つ相談が多く寄せられた1年でした。

また、2017年度はNPO法改正にかかわる相談が寄せられています。2011年度改正を機に認定を取得した認定NPO法人の更新に関する相談や、2016年度改正に伴う定款変更等についての相談が多く寄せられました。

多様な当事者と当事者団体からの相談

◆◇“新たな当事者性”の相談も

自分に合うグループにであいたい

病気でもできるボランティアはないか

自助グループの資金について悩んでいる

バリアフリーの会場費が高い

ホストの役割を求められて大変

相談できる仲間がほしい

2017年度も、さまざまな状況にある「当事者」ご本人や当事者団体からの相談が多く寄せられました。

例えば、「1年の半分だけ引きこもり状態にある」、「病気がちで家の片づけができない」などの制度の狭間や既存のサービスが想定していない困りごとを抱えた方からの相談、「セクシャルマイノリティでパニック障害」、「自身がアダルトチルドレンで、今子育てをしている」など複数のテーマが重なり合った方からの相談、「引きこもり経験がある」、「虐待を受けていた」など子どもの頃の困難な体験や見えにくくわかりづらい「生きづらさ」を抱える方からの相談、既存のグループが少ないあるいは存在しない新たな「当事者性」に関するもの(特別養子縁組の会、カサンドラ症候群のグループ、コーダ(親が聴覚障害を持っている)のグループなど)、その他「アスペルガーなのかなと思う」、「さみしい」、「友達がいない」等、多様な相談が寄せられました。

個人からは「気持ちを話したい」、「自分にピッタリくるグループを探したい」、「障害や病気があってもできるボランティアを探している」、「休職中も何か社会とつながれるものが欲しい」などの相談が寄せられました。2017年度は、OCD(強迫性障害)の当事者団体に関する情報を求める相談と、「住まいを追われそう」、「今日泊まるところがない」など住まいに関する相談が多く寄せられた一年でした。

既に当事者活動をしている団体からは、資金・活動場所・組織運営に関する相談が多く寄せられています。これらのなかには当事者団体以外の市民活動団体と共通するものも多くありますが、一方で当事者団体ならではの難しさもみられました。

特に、社会資源が一般のNPOやボランティア団体に比べ利用がしにくい状況がうかがえました。例えばメンバーが多地域から集まっていたり、匿名やニックネームで参加をしているグループなどでは、校正メンバの条件により定額で使用できる公的施設が使えないことも多くあります。また対象者が少ないことで、助成金等の「対象外」」となってしまった団体もありました。

また、当事者団体の場合、一部のメンバーが運営の要となっていることも多く、そういった立場の方からは「自分にとって必要な場を作ったのに、周りからはホストの役割を求められて苦しい」、「主催者になったら、相談できる仲間がいなくなってしまった」などの声がありました。そのような中で「当事者団体を立ち上げる仲間を応援したい」という声が上がり、各団体で取り組みが始まりつつあります。

2017年度、東京ボランティア・市民活動センターでは様々な相談に対応できるよう、外部研修への参加や、勉強会の開催、他機関への訪問などを通して相談員のスキルアップに取り組みました。今後も相談内容の傾向から団体の抱える課題や市民の活動ニーズを把握し、市民活動を取り巻く状況の変化を読み取りながら、センター事業に反映させていきます。

(相談担当専門員 森玲子)

情報を探す