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(2019年3月31日 / 相談担当 )

TVACレポート

TVAC相談窓口から 1年間の相談を振り返って(2018年度)

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東京ボランティア・市民活動センター(TVAC)には、市民の方(個人)、ボランティアグループ、市民活動団体、NPO法人、社会福祉施設、企業、行政機関、市民活動推進団体、マスコミなど、さまざまな方から多数のご相談・お問い合わせが寄せられています。

2018年度の相談件数は16,309件で、2017年度より2,000件以上増加しました。概要をご紹介します。

相談者の属性と相談方法

◆来所相談が増加

相談方法には、電話・来所・メール・手紙・FAXなどがあります。電話では比較的安易な問合せに対応し、組織運営や事業展開、込み入った事情のある相談などは来所で対応しています。相談方法の中で最も多いのが電話によるもので全体の47%(7,700件)を占めますが、来所での相談が2017年度より1,800件以上増加(6,408件)し継続相談に至るケースも増加するなど、相談内容の複雑化を反映した結果となっています。

相談内容は、ボランティア・市民活動への参加を希望する方からの相談のほか、ボランティアグループ(以下、VG)やセルフヘルプグループ(以下、SHG)の立ち上げや運営の相談、法人格の選択に関する相談、NPO法人の設立・運営に関する相談、認定NPO法人の申請や更新にまつわる相談など幅広く寄せられています。

図1

電話 7,700件 (47.20%)

来所 6,408件 (39.30%)

メール 1,654件 (10.10%)

その他 547件 (3.40%)

*NPO:ボランティアグループ、セルフヘルプグループ、NPO法人などの非営利の市民活動団体  

*その他の団体:学校・福祉施設・行政・マスコミ等

◆相談の6割がNPOから

相談者のうち約6割にあたる10,133件がNPOからの相談です。ここでの「NPO」には、NPO法人だけでなく、VGやSHGを含む任意団体として活動する市民活動団体等も含まれています。

相談の内容は、「団体を法人にしたい」、「自分たちに合った法人格を選択したい」など組織のかたちに関する相談や、団体の活動に「助成金を活用したい」、「寄付を募る方法を知りたい」など資金調達に関する相談、「ボランティアが集まらない・続かない」といったボランティアの募集と受入に関する相談、「誰が・何の会議で決めればいいのか」という団体の意思決定に関する相談、「週に1度の頻度で事務所として使える場所を探している」、「相談事業に使えるスペースを探している」という場所に関する相談など、多岐に渡って寄せられました。

NPOからの相談においては、会計・税務・法務・労務など、専門的な領域に関わる相談が増加しています。このような相談に対してTVACでは、公認会計士、税理士、弁護士、特定社会保険労務士等の専門家と連携しながら対応をすすめています。専門的かつ高度な相談が増える一方、「お金の記録の仕方がわからない」、「ボランティアとアルバイトの違いは何か」など団体運営の基礎的な内容の相談も多く寄せられました。また、2018年度は活動の担い手に関して労務関係が発生する手前の段階で「このままボランティアとして関わってもらうか、雇用か…」と悩む団体からの相談が多く寄せられ、多様な関わりの市民によって支えられているNPOならではの状況と悩みが垣間見られました。

個人からの相談は2,947件で、全体の約18%です。ここには「ボランティアの探し方」や「NPOを探している」という相談などが含まれていますが、個人からの相談のうち半数以上(1,519件)が様々な生活のしづらさや困りごとを抱えた「“当事者性”のある人」からの相談でした。「話したい」・「聞いてほしい」というものの他、「自分自身が行ける自助グループを探している」・「当事者活動をはじめたい」という相談もあります。

なお、NPOからの相談のうち約1割にあたる917件が、SHGや当事者団体からの相談です。個人と合わせて、相談全体の約15%が「当事者」からの相談にあたり、年々増加傾向にあります。TVACでは当事者活動や当事者団体の設立・運営を支えるための相談対応・情報発信等にも取り組んでいます。

NPOからの相談、個人からの相談に次いで、ボランティア・市民活動センターなどの市民活動の推進団体からの相談(1,572件)、企業からの相談(924件)が寄せられています。その他、社会福祉施設や行政、学校・教育機関、保健・医療機関、マスコミなど多様な機関からの相談がありました。

図2

NPO 10,133件 (62.10%)

個人 2,947件 (18.10%)

推進団体 1,572件 (9.60%)

企業 924件 (5.70%)

その他の団体 733件 (4.50%)

相談の内容

相談内容において、最も多いのが「NPO法人に関する相談」(設立・運営)で、7,871件です。次いで「団体の運営に関する相談」(法人・任意団体)が2,576件でした。この2つのカテゴリーの合計は10,447件です。TVACには多様な相談が寄せられていますが、NPO法人を含む市民活動団体の「設立」と「運営」に関する相談が圧倒的に多く全体の6割以上を占めています。

◆NPO法人に関する相談(7,871件)

NPO法人の設立や運営に関する相談は2017年度より約3,000件増加し、相談全体の約48%を占めています。内容はNPO法人の運営(2,542件)、設立(1,341件)、会計(1,102件)、申請内容(920件)、報告・変更(655件)、法務(369件)、その他(942件)です。

設立に関する相談は、2018年度も引き続き、要件について、申請書類について、定款について等の他、NPO法人と一般社団法人の比較を中心とした法人格の選択に関わる相談、認定NPO法人を視野に入れた法人設立の相談などが寄せられています。なかでも、「社員の資格の得喪に条件をつけたい(議決権をもつ人を制限したい)」といった相談や、「特定のメンバーで意思決定したい」相談、「企業の事業の一部をNPO法人として切り出したい」などの相談はここ数年増加しています。「代表者の意向で運営していきたい」、「設立メンバーだけで運営したい」など、NPO法人の重要な要素である開かれた市民参加を前提とせずに設立を希望する相談もありました。

また、まだ仲間がいない状態で設立時に必要な「10名の社員の集め方」に関する相談や、任意団体などでの活動経験がない状態でいきなり「法人化と同時に活動をスタートさせたい」という団体も多くありました。そういった場合は、法人設立後、運営に支障や無理が生じることも少なくありません。「こんなはずではなかった」という状況に陥らないよう、設立前に自団体にあった形態を十分に検討する必要性を感じます。

NPO法人関係で一番多く寄せられている「運営に関する相談」は、すでにNPO法人となっている団体からの法人運営に関する相談です。2018年度は、NPO法改正に伴う定款変更や公告に関する相談の他、解散に関する相談、社員の除名や役員の解任などに関する相談が数多く寄せられました。また、税務・労務等が複雑に絡み合う相談や、「利益相反」についての問合せ、組織内外の様々なトラブルに関する相談が多く寄せられました。

また、「契約」に関する相談が多く寄せられた1年でもあります。「この契約書に書かれていることの意味することは何か」、「団体の財産・権利を守れる契約書のつくり方を知りたい」などの相談だけでなく、ボランティア活動における「同意書」や情報の取扱い等に関する「誓約書」に関する相談も多く寄せられ、NPO法人が多様な市民や機関と協働・協力関係をもって事業をすすめていることを示唆する結果となりました。

◆NPOの運営に関する相談(2,576件)

資金調達や広報、組織運営、ボランティアマネジメント、事業の企画など、市民活動団体が直面する運営・活動上の課題について、法人格の有無を問わずに対応しています。2017年度(849件)より1700件以上増加し、運営に悩みを抱える団体が多くあることがわかります。特に組織運営についての相談(912件)、資金・助成金の相談(523件)などが多く寄せられました。

◆社会貢献に関する相談(1,307件)

企業などからの、社会貢献活動の企画や運営に関する相談です。2017年度(938件)より約370件増加しました。社員研修を通じての社会貢献、社員のボランティア活動を推進するための取り組みについて、NPOと協働した事業のすすめ方など、多岐に渡る内容での相談が寄せられています。企業が社会貢献という文脈で、NPOや社会課題に対して、高い関心を寄せていることがうかがえます。

◆ボランティア活動希望に関する相談(596件)

「ボランティア活動に参加したい」という個人やグループなどからのご相談です。やりたいことが決まっておらず「何かがしたい」という方が一番多く、ボランティアしたいけれど「どんな活動があるのかまず知りたい」、「具体的なイメージがわかない」、「何をしたいかわからない」といった状態の方も多くいることがわかります。また、学生は「福祉」や「子ども」に関わる活動を、社会人は「災害」や「特技・資格・経験を活かした活動」を希望する傾向にありました。日本語を母語としない人たちや、海外からの旅行者からのボランティア希望、視覚障害のある人や手話ユーザーからの「ボランティアしたい」という相談もあり、多様なコミュニケーションで対応できる活動先の開拓が求められています。

◆その他(3,959件)

見学や取材の依頼、TVACの機能や事業について、生活上の困難や悩みごとに関する相談、「話したい」「きいてほしい」相談などが含まれます。

図3

NPO法人に関する相談 7,871件 (48.30%)

団体の運営に関する相談 2,576件 (15.80%)

社会貢献に関する相談 1,307件 (8.00%)

ボランティア活動希望に関する相談 596件 (3.70%)

その他 3,959件 (24.20%)

多様な「当事者」とセルフヘルプグループからの相談

2018年度も、さまざまな状況にある「当事者」ご本人や当事者団体からの相談がありました。個人からは1,519件、団体からは917件の相談が寄せられ、TVACに寄せられる相談全体の約15%を占めます。2017年度に比べ、個人からの相談は70件減少していますが、当事者団体からの相談は560件以上増加しました。

当事者性の内容は多岐に渡ります。難病、疾病、障害、マイノリティ、被害などの他、複数のテーマが重なったもの、外からは見えにくくわかりづらい「生きづらさ」、「虐待を受けて育った」などの共通の生育環境をテーマとしたもの、「半分ひきこもり」や「依存症の予備軍」という、既存のテーマに「あてはまりにくい」当事者性の他、「自身も発達障害で、発達障害の思春期の子どもがいる」・「同じ障害をもつ、40代の女性限定」など比較的限定したテーマに関するものもありました。

「当事者」個人からは、「さみしい」・「話したい」・「将来が不安」という相談が一番多く、なかには「こんなはずではなかった」、「愚痴をきいてほしい」など、自分の境遇や人生への想いを吐露する電話も多く寄せられました。さらに「自身に合うセルフヘルプグループを探している」、制度が対応しない困りごとについて「対応してくれる団体を探したい」などの情報を求める相談、「自分の当事者性を活かして(講演会や出版などの)活動をしたい」、「難病を抱えているが、ボランティアとして社会に関わりたい」など活動に関する相談もありました。

当事者団体・SHGからは、安定的な場所の確保に関する相談、運営資金に関する相談の他、グループ内外の人間関係やトラブルについてなど、幅広い相談が寄せられました。さらに、法人化したいくつかのSHGでは、当事者団体として大事にしたい意思決定の方法と、法人運営上求められる仕組みとのギャップに苦悩している状況もみられました。

2018年度の傾向として、「他のSHGとつながりたい」、「テーマの異なるSHGの情報を知りたい」、「当事者団体のネットワークをつくりたい」など、横のつながりづくりに関する相談が多く、複数の団体が一緒に来所し「多様なSHGがつながれる機会を企画したい」という相談も寄せられています。TVACではこういった相談に対し、他団体とつなぐことや企画への協力を通して、市民社会の重要な担い手としてのSHGが、多様に、かつ連携して活動を広げていけるようサポートをしています。

2018年度、TVACではさまざまな相談に対応できるよう、スーパービジョンの実施、外部研修への参加や定期的な勉強会の開催、他機関への訪問などを通して相談員のスキルアップに取り組みました。今後も相談内容の傾向から団体の抱える課題や市民のニーズを把握し、市民活動を取り巻く状況の変化を読み取りながら、センター事業に反映させていきます。

(相談担当専門員 森玲子)


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