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(2021年2月21日 / TVAC )

TVACレポート

シンポジウム「コロナ禍とボランティア・市民活動 ~これまで と これから~」を開催しました。(2021年1月30日)

キーワード
ボランティア 、 市民活動 、 NPO 、 コロナ 、 シンポジウム
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2020年、あっという間に広がった新型コロナウイルス感染症は、人びとの仕事や生活に大きな打撃を及ぼし、生活困窮に陥る人びとが急増しました。

一方、多くのボランティア・市民活動は、人との接触自体がリスクとなるコロナ禍ゆえに、一時休止に追い込まれましたが、その後、活動の仕方や集まり方を工夫して、活動を再開するグループや団体・機関が増えています。

こうしたなか、東京ボランティア・市民活動センター運営委員会は、コロナ禍での社会課題の広がりや変化、また、それに対するボランティア・市民活動のあり方について議論を重ねてきました。そしてすぐには収束しそうにない、このコロナ禍でのボランティア・市民活動のあり方をめぐり、シンポジウムを企画。1月30日に開催しました。

当日の参加者は、オンラインを基本として全国各地から156名。当初予定していた定員を超える人数となりました。

課題提起

瀧澤利行(茨城大学教授)さんから課題提起として、まずCOVID-19に対峙する難しさが挙げられました。潜伏期間が比較的長く、不顕性感染(無症状もしくは自覚がない程度の症状)の率が比較的高いことを指摘します。そして、ボランティア・市民活動を活性化させる「多様性」が感染拡大のファクターになっていることを挙げ、活動上の留意点を提示。また、正常性バイアス*1や認知的不協和*2による認識の歪みを指摘する一方、リスクを恐れて活動を停止するのではなく、正しく状況判断をする必要性を訴えました。

報 告

関口宏聡(シーズ・市民活動を支える制度をつくる会)さんからは、「資金」に関する報告がありました。新型コロナウイルスにおけるマイナスの影響として活動の自粛・中止・延期、団体の休止・解散等を、プラス面として市民活動への関心の高まりや支援の広がり等を挙げました。資金面では、NPO等の政策提言による政府・自治体の支援策実現、市民・企業・助成財団による支援の迅速化、増加を挙げ、なかでもクラウドファンディングによる寄付は大幅な増額となり、日本の寄付文化がこれを機に変わる可能性を示唆します。

活動現場からの提起

NPO法人good!からは、大学生が登壇し、学生の現況を語りました。「授業はオンラインなのにアルバイトに行くことに葛藤がある」「家族をストレスのはけ口にしてしまう」「Go Toキャンペーンは推進されて、学生はなぜ学校へ行けないのか」といった声が伝えられました。コロナ禍で退学を考えたことのある学生は、32%にのぼるそうです。

認定NPO法人難民支援協会は、コロナ禍での難民の状況として、失業や時短・シフト減、支援者の失業、モスクや教会の閉鎖などで困窮状態が深まっており、それに対しての同法人や他団体の取り組みについてお話がありました。

NPO法人せたがや子育てネットからは、昨年の活動休止中や再開後の工夫・配慮のほか、市民・団体・企業などの協力を得て、せたがやフードパントリーが立ち上がったという報告がありました。

岡さんのいえ TOMOからは、「自粛期間に新たなことを試す機会が生まれた」「『とじる』ことで必要としてくれている人の存在を再認識できた」「『できない』ことよりも『できる』ことを、と話し合った」といったお話がありました。

パネルディスカッション「これからのボランティア・市民活動」

パネルディスカッションでは、まず、孤立化する学生たちのつながりづくりについて、質問がありました。現場から提起したパネラーからは「感染拡大に気をつけて野外活動をしている」「動画や冊子などカタチあるものをつくり、次につないでいきたい」「もともと学生主体の活動に現在も来てくれていて、学生たちの居場所になっている」といったお話がありました。また、難民支援協会の石川えりさんからは、日本で働く若いベトナム人と交流を深めている「日越ともいき協会青年部」の事例が挙がりました。

居場所づくり活動について、中野区社会福祉協議会の草野由佳さんから、同社協でサロンのためのガイドラインを出したというお話がありました。再開しているサロンでは、もともとのつながりは保てているが、新しい人の参加がないという新たな課題もあるそうです。

ダイナックス都市環境研究所の津賀高幸さんには、コロナ禍での災害支援についての質問がありました。令和2年7月豪雨の際、県内のボランティアが多く活動した一方で、東日本大震災の広域避難者同士の交流が減っており、時間をかけてつながりを回復していく必要があるとの課題が挙げられました。

東京都生活文化局より、「新しい日常」におけるボランティア活動などについて紹介する特設サイト「どこでも共助」や、コロナ禍での在住外国人の支援を目的とした「東京都外国人新型コロナ生活相談センター(TOCOS)」、2020年10月に立ち上げた「東京都つながり創生財団」の紹介があり、きめ細かく対応していきたいというコメントがありました。

「1人ぼっちにさせない、なってはいけない。そのためには、一つひとつ・一人ひとりは小さくても、手を携えて活動していくことが大切」という挨拶で、シンポジウムは幕を閉じました。

*1 環境を変えたくないという意識から、起きている状況を正常性の延長の範囲ととらえようとすること。たとえば、「ただの風邪と同じ程度」「多くは無症状感染者」という意識。

*2 認識が矛盾した際の不快さを解消するために、都合のいい情報に置き換えてしまうこと。たとえば、「喫煙しても肺がんにならない人もいる」「季節性インフルエンザの関連死の方がCOVID-19の感染死亡者より多い」など、部分的には真実の情報を状況全体に通用する事実として認識しようとすること。


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