市民社会をつくるボランタリーフォーラムTOKYO 2020

セルフヘルプグループってなに?
〜「ひとりじゃない」を実感できる場の力
(TVACの相談活動から)

東京ボランティア・市民活動センター(以下、TVAC)には、さまざまな「当事者」の方からの相談が寄せられています。TVACでは、年々増加する相談への対応をより充実させるために、当事者活動やセルフヘルプグループ(以下、SHG)に関する情報交換会や交流会など、様々な取り組みをおこなっています。

そこで語られたSHGとのであい 、活動を立ち上げたきっかけ、仲間の存在についてなど、さまざまな「声」をご紹介します。




一人ひとりの、はじまりの物語

わかってくれる人と出会いたい

「どこにいても居心地が悪かった」、「自分が『なんなのか』わからなかった」、「絶望と怒りしかなかった」、「みんな、どうやって生きているんだろう」、「自分でも何に悩んでいるのかわからなかった」、「こんなことで苦しいのは自分だけなんじゃないかと思っていた」、「インターネットやテレビをみて自分が『当てはまる』ものを探し求める日々だった」。SHGと出会う前、まさに暗中模索の状況だったと多くの方が語ります。


そんな中やっとグループを見つけても、扉を開けるまでに長い時間がかかった方も少なくありません。たくさんの葛藤をこえて、やっとのことで辿りついてみると、そこでは当事者同士、参加者同士がありのまま、自由に語り合っている…その様子に「驚愕した」という方もたくさんいらっしゃいました。そして、他の参加者の話をきいて「自分が悩んでいるものに"なまえ"があったという衝撃」を感じたり、「モヤモヤにタイトルがついた感じがした」という方もいます。勇気を出して自分の心のうちを明かしたとき、「わたしも」と言ってくれる人がいて、「それが驚きと安堵だった」と話す人もいました。それは、ずっと一人で抱えてきたものが、自分だけじゃない、わかってくれる誰かがいると感じられた瞬間でもあります。


グループとの出会い

  • 参加する前から会があることは知っていて、何年もチラシを持っていた。
  • 自分だけと思って、苦しかった。社会がちがったら生きやすかったと思う。
  • ずっと「グループを探す」というところまでいかなかったけど、やっと参加できるところまできた。
  • 最初に参加するまで長かった。勇気をだした。
  • 自分のことをわかってくれる人がいた。
  • 他の人の話を聞いて、自分がいま、どういう状況にいるのかがわかった。
  • 受け皿があることを知って、ささやかな希望になった。
  • 普段人に言えないことも、ここでは言えるかもと思った。
  • 悩みは解決しないけど、心の支えになった。
  • 世の中捨てたもんじゃない、と感じた。


活動のはじまり方

TVACとつながりのあるSHGにおいては、立ち上げた方のほとんどが他のグループの活動に参加をしたことがありました。他のグループに参加しながら並行して新たな活動をはじめる方も多く、新しい活動は「今とはちがう活動がほしい」という気持ちから立ち上がっています。

また、やっとのことで見つけたグループであっても、参加するうちに「なんか違うかな…」と感じることもあり、「ぴったりこない」、「これじゃなくて、あれがしたい」、「自分の居場所をつくりたい」そんな想いからたくさんの活動が生まれています。

最初は一人の想いでも、活動して仲間が増えることで、グループはたくさんの人の支えとなっていきます。


新しいテーマで

SHGは多くの場合、そのテーマとなる「当事者性」、たとえば、「ひきこもり」や「暴力の被害」、「ひとり親」など共通する状況や体験、あるいは同じ病気や障害ということを軸に参加者(当事者)同士がつながっています。自分自身の求めるテーマの団体があるとも限らず、その場合「とりあえず、近いテーマのところに行ってみる」という場合もあります。さらに「当事者性」は複合的なことが多く、自分にぴったりと思える会を探すのは大変です。実際、多くのグループが「自分が求める会がなかったから」と立ち上がっています。


新しい活動で

テーマに加えて、「何をやるか」も大事です。SHGの活動内容は多岐にわたっています。ミーティングと呼ばれる分かち合いの会や、回復のための12ステップ 、おしゃべり会、お楽しみイベントなどの余暇活動、学習会、ワークショップの他、社会に情報を発信する活動、啓発のための活動、政策提言、「当事者研究」なども増えていますし、インターネット上でつながるオンラインミーティングや掲示板での交流もあります。最近では、「女子会」や、「バー」と名付けた夜に開催する集まりも見かけます。SHGに求めるものは人それぞれですが、続けて参加するには活動の内容が合っていることも重要になります。今はない活動をつくるために、既存のグループから新しい団体が立ち上がることもあります。


見えない「前提」を感じて

テーマや活動内容の「違うかな…」とは別の理由で新しいグループをはじめる方もいます。その一つが「他のグループに参加したけど、暗黙のうちに、一つの価値観が前提にあることを感じて、苦しかった」という場合です。たとえば「DV被害の自助グループに行ったけど、異性間での暴力が暗黙の前提になっていて同性パートナーから暴力を受けた自分は居づらかった」とか、「グリーフケアのグループに参加したけど、亡くなった理由を話したら周りの空気が変わってしまい、そこにいるのが苦しくなった」という方もいました。


最近の動向

最近は、同じテーマでも世代別の活動が立ち上がることが増えています。「若年発症」の方に限る患者会や、30代で家族の介護をしている人たちのグループ、中高年世代の発達障害のグループ などは、既存の当事者会での話題が自分のライフステージと合っていないと感じ、仕事や結婚、将来のことなど、自分たちの世代ならではの話題で情報交換できるグループとして立ち上がっています。特に「はたらくこと」は、出勤日や時間が決まっている仕事に就くことが難しい病気・難病などの患者会、法定雇用率に含まれることになった精神障害や発達障害の当事者会にとって、大きな関心テーマです。

また、明確なタイトルやテーマはつかないけど、なんとなく生きづらさを感じる"グレーゾーン"のグループ(発達障害の「診断」がつかない・受けていない人たちを"グレーゾーン"としているグループもあります)、親や恋人・パートナーが障害をもっている人たちのグループ、同性パートナーを亡くした人たちのグリーフケアのグループ、近親者からの性暴力を受けた人たちのグループ、「子育て」の中でも対象を限定しているグループ(特別養子縁組家庭やステップファミリー、双子や三つ子などの多胎児の家庭)など、多種多様なグループが生まれています。そして、「精神疾患をもつセクシュアルマイノリティ」や「発達障害で依存症」の人たちのグループなど、いくつかのテーマを併せ持つグループも続々と誕生しています。


活動の内容も、サロンやミーティングへの参加にハードルを感じる仲間のために、あえて「テーマ」についての話をしなくてもいい、ものづくりの活動や、アートなどを通じた表現活動を取り入れるグループもでてきて、ますます多様になっています。一方で、体験を語り合ったり分かち合ったりの活動はせずに、スポーツや音楽など、趣味を通じた交流を目的としたグループも増えています。

さらに、参加者同士をグループ化したり、「地元で立ち上げたい人」の支援をするSHGも増えてきました。もともとグループが少ないテーマの会には全国から参加者が集まる状況がありますが、地域に増やすことで当事者が無理なく参加できるようにしたり、グループが増えることで選択肢を増やしたり、社会の認知を高めていきたいという目的もあります。SHGは細分化し、増えたり減ったりしているので、「どこにグループがあるかわからない」、「どんな活動があるのか、知りたい」という仲間のために、SHGをリストにして公開する団体も増えてきています。


活動をはじめたときの想い
  • なかったから、つくった。
  • どこかに自分と同じ人はきっといると思っていた。
  • 参加していた会で話す内容が、自分の状況とちょっと違った。
  • 体験の共有ではなく、生活上の課題をどう解決するかを考える会がほしかった。
  • 「その時のこと」を話せる仲間がほしかった。
  • ここでは「話題にしてもいい」という時間をつくりたかった。
  • 他の人はどうやって乗り切ったのか、どう工夫しているのか知りたかった。
  • 自分たちがサバイバーになれた理由を仲間と話すことで探りたかった。
  • 会議室で共有するだけじゃなく、社会に伝えて、変えたいと思った。
  • 自分だけの問題じゃなく、誰かと共有できる問題にしたかった。



セルフヘルプという力

SHGは、市民社会を実現していく上で欠かせない重要な存在です。

当事者にとっては、悩み・不安・苦しみ・悲しみなど様々な気持ちを分かち合える共感と、体験や想いを共有できる安心の場であり、それによって自身の存在を確かめられると語る方も多くいます。「わかってくれる人」や仲間の存在が大きな勇気となって日常を支えてくれるのです。また、具体的な経験から見出された生活の工夫や、先ゆく人の知恵も共有され、当事者同士だからこそ可能な互助・共助の力となっています。

またグループの中には、自分たちの状況や課題を社会に発信していく機能を持つものもあり、その過程で、"なまえ"のなかったものに光をあてたり、「見えにくいこと」や「見逃されていること」が認知・共有されるように発信をしたり、当事者がグループの外でも「隠さずに、言える」社会にしていく、そういった働きかけがされています。SHGの存在が、社会のありようを問い、社会を変えていくことにつながります。


最後に、セルフヘルプグループ、当事者の集まりについての声を紹介します。


セルフヘルプグループとは…

  • 「そうだよね」と言ってくれる人がいるところ。
  • 見えにくいものについて「わかる、わかる」と言ってくれる場所。
  • いつもは隠すことに必死だけど、ここではなんでも出せる。
  • 自分たちには仲間が必要なんだとわかる場所。
  • 一人ひとりでなく、グループで悩むことの可能性を感じる。
  • 自分が自分でいられる時間。
  • 「今日、来てよかった」と言ってもらえることが自分の 励みになる。
  • グループをやることで、自分自身の自己肯定感が高まっている。
  • ちょっとしたことでも仲間と話していくと、日々の生活が変わる。
  • 専門家が知らない、当事者だからわかること。そういうヒントの交換や情報の積み重ねができる。
  • 社会とのいろんな接点が増える場所。



グループ運営と継続の難しさ

活動・テーマに関わらず、悩みは共通

SHGの運営や活動を続ける中で発生する様々な課題のうち、多くの団体が直面するのが「場所」「お金」「人に関すること」です。これらは、SHGに限らずほとんどのボランティアグループ・NPOにとっても悩みの種ですが、SHGだからこそ、より一層難しい状況になってしまうこともあります。


まず、場所の問題です。多くのSHGがサロンやミーティング、交流会などの活動に使える場所探しに苦労をしています。安価に借りられる公的施設はNPOやボランティアグループにとって頼りになる存在ですが、「区民○人以上の参加や構成」などが利用条件になることも多く、名簿提出が求められることも少なくありません。SHGの場合、安心して参加できる環境を保障するために、名前や住所を言わなくても参加できたり、事前申込み不要で当日参加できるようにしていることも多くあるため、名簿が作れず、そういった手続きが必要な施設を利用することができません 。


単発のイベントであればどうにか会場を探すことができたとしても、SHGのなかには、参加者の有無に関わらず「定期的に開催すること」を重視しているところもあります。そうすることで、まだグループにつながっていない人たちにも「いざとなったら行ける場所がある」という安心感をもってもらいたいという願いが根底にあるからです。しかし、定期利用ができる安価な会議室がほとんどなかったり、なんとか会場の確保をしても参加者がなくてキャンセルするときに費用がかかることがあります。地域の中に費用負担が少なく、SHGが継続的に安心して利用できる(費用負担の少ない) 場所が増えることが求められています。


お金についても、多くの悩みが寄せられています。規模の大小に関わらず、活動をしていくには資金が必要になります。会員制にして会費を受け取ることで安定的な収入にしている団体も少数ありますが、多くの団体では、費用面での参加者負担を少なくするために苦心し、参加費を低く設定したり、無料にする代わりに任意の額の寄付をもらったり、時には主催者やコアメンバーの持ち出しで賄ったりしています。


参加者からお金を受け取ることについての悩みは、「参加のハードルを下げたい」という想いとのはざまで生じるジレンマでもあります。SHGの運営者は経験的に、SHGの扉を開けるのに多くの時間と勇気が必要であることを知っています。そこで、例えば匿名での参加や、1回だけの参加を歓迎することで、なるべく多くの仲間の参加につながるように工夫をしています。費用負担を抑えることも、なるべく無理なく参加してほしい、続けて来てほしい…という願いの現れです。


活動をはじめた最初のうちは、会場費と、チラシなどの印刷費、お茶代などが中心で、大きなお金がなくても運営できますが、活動の広がりとともに、消耗品費や交通費、謝礼などが必要になることもあります。主催者の持ち出しや特定の人の負担に頼り続けることは困難ですから、グループと活動が無理なく続いていくためには、参加者(当事者)以外、グループの外から資金を得られる仕組みづくりが重要になります。


活動・運営上の課題

①場所のこと

  • 定期的に借りられる場所が見つからない。
  • 予約がとれた無料のところを転々としているため会場が安定せず、人が集まりにくい。
  • 匿名グループのため「区内在住者」がいるかわからず、公的施設を利用できない。
  • 安価な会議室の中には、お茶はペットボトルのみ許可されているところがあり、会場以外にお金がかかる。

②お金のこと

  • 活動を続けるための資金が持ち出しで苦しい。
  • 助成金が対象外となることがある。
  • 収入がなかったり、障害年金だけの人も多いので、参加費をあげられない 。

③運営体制のこと

  • 一部の人が運営を担う形になってしまい負担が大きい。
  • 当事者だけで準備や広報、事務作業をするのが大変。
  • 新しいやり方を導入したら、ずっと担当していたメンバーとの関係が悪くなった。
  • いろんな考えのメンバーがいて「何を大事にするのか」がずれてしまう。

④自分たち(運営の担い手)のこと

  • 体調によって活動が不安定になりがちで、たびたび休止してしまう。
  • やりたいことをやるために始めたけれど、だんだん参加者へのサービス提供になってきた。
  • 「やりたかったこと」なのに、いつの間にか「やらなきゃいけないこと」になった。
  • 自分が相談できる場、吐き出せる場がなくなってしまった。
  • 主催者として他のグループにも顔が知られており、自分の相談先がなくなった。
  • 孤独感や辛さが分かるから夜中でも電話の対応をしてしまい、活動と生活の線引きができない。
  • ずっと一人でやってきていざ仲間ができると…正直「動きにくくなった」と思うことがある。

⑤その他

  • 参加者が集まらない。
  • 会や活動の情報を届けたいが仲間がどこにいるかわからない。


工夫や知恵も共有する

TVACで開催するSHGの交流会では、お互いの課題を聞きあうだけでなく、「こんな風にしているよ」という工夫の情報交換も盛んです。


活動・運営上の工夫
  • 匿名参加のグループなので名簿が作れなかった。今は、参加者(当事者)名簿ではなく、会を応援してくれる人たちに登録してもらって「応援団」の名簿で対応している。
  • 無料の会場がとれたときでも参加費を受け取って、有料の会場でも参加費を上げなくていいようにしている。
  • 運営に必要なもの(お菓子や文具)をもってきてくれたら参加費割引として 、集まりすぎたお菓子などは他の会に数百円で買い取ってもらっている。
  • 運営を一緒にやってくれる人はとても必要だが、トラブルも多いので、慌てず「お試し期間」を設けている。
  • 運営に関わるメンバーは、現メンバーのスカウト制にしている。
  • 団体のホームページに企業の広告を載せて、年間○○円くらい収入がある。
  • 事務が一人に偏って大変だったので、誰でも担えるやり方をつくって交代で運営している。


つながって、支える

SHGは、最初から自分以外の「誰か」を受け入れる覚悟をもって立ち上がっていますが、様々な「当事者性」と、「会への期待」をもった方が来る中で、場合によっては、全ての期待に応えられないこともあります。一方で、「誰でも参加OK」とオープンにしすぎることで、逆に参加しにくくなってしまったり、安心できる場と感じられなくなる人がいることも経験的に知っています。だからこそSHGはテーマや対象を限定し、その文脈で参加する人たちが安心できることを何よりも優先しています。


最近は、一つのグループで完結することなくゆるやかなネットワークを作り、グループ同士がつながることで「誰かの居場所」や「期待」を少しずつ担いあう形も模索されています。

活動や運営の限界と連携について

  • 参加者からの「これやってほしい」はあるけど、全部自分たちだけでやらなきゃいけないことじゃない、と考えるようにしている。
  • いろんな参加者がいるが、運営メンバーの当事者性と重ならないことは正直やれないし、活動がぶれてしまう。
  • 自分のグループでは扱えないテーマをもつ参加者や、抱える問題がダブル・トリプルの参加者もいる。普段から他のグループとのつながりを積極的につくって、いくつかのグループで、その人の少しずつを受け止められるようにしている。
  • 自分のグループでは扱えない「問題」も、他のグループとつながっていると、自分が信頼できるグループを紹介することができる 。


なぜ、当事者活動をするのか

活動する意味、続ける原動力

SHGの運営は苦労も多く生活との両立も楽ではありません。それでもなぜ、多くの方たちが「当事者」として活動をはじめ、続けているのでしょうか。7人の方にお話をききました。


  • 子どもの頃、父が自死して差別を受けてきました。悔しくてたまらなかった…。ずっと「私のせいじゃないのになんで」って、思っていました。でも、活動の中でいろんな人たちと出会い、人生に困難のない人なんていない、私だけじゃない、みんな何かの当事者だということを知りました。ずっと一人だと思っていたけど、活動を通して仲間がたくさんできました。誰もが置き去りにされない社会を目指したいと思って、活動をしています。
  • 活動を始めたのは、私の回復のために私の「語り」を聴き続けてくれた主治医や周りの人たちに恩返しをしたかったからです。私にはそれ以外に感謝の気持ちを伝える術が浮かばなかったのです。運営・継続には大変なこともありますが、活動を続けているうちに、まるで活動が我が子のように思えてきて、私自身の生きる意味に変わりました。そして、現在は生活の一部として、心のバランスを取るために欠かせないものになっています。
  • LGBTQでかつ疾患や障害を抱えた人たちの自助グループをしています。精神疾患や発達障害のグループでは、疾患や障害のことは話せるけど、当事者としての恋愛や性については、正直に話すことが難しいです。一方、LGBTコミュニティでは、精神疾患やHIVがいまだにタブー視されていることも多く、それらについて正直に話すことは難しいと感じます。いまの活動は、同じ立場にある仲間や医療系の団体ともつながれて、その人たちから得られるヒントがたくさんあります。
  • 精神疾患のセルフヘルプグループをしています。自分が病で苦しんだ体験を生かして、当事者同士で寄り添ったり、体験を共有しあうことで支え合いたいと思って活動をしています。当事者活動をしているのは、経済や科学技術などの発展を重視する傾向のある社会の中でわたしたち「当事者」が発信することで、もっと「心」を大切にした社会にしていきたいと考えているからです。
  • みんなの依存先を増やすために当事者会をしています。さらに言えば僕の依存先を作るために活動をしています。僕らも、みんなも、お互いに依存する。多くの人で負担を分散して依存し合うこと。それが『みんなで支え合う』ことなんだと思っています。
  • 今も「暴力を受ける側にも問題がある」と考える人が身近にもいることを知って、失望することがあります。そうした現実や感覚に違和感をもち、抵抗しようと思うものの、ひとりで抱えていると孤独感が募って疲れてしまいます。安心して思いを共有できる場と時間があるということは、同じ体験をした人たちの心の拠り所になると信じています。また、自助グループには具体的な体験があり、それ・その後を生きる当事者がいるのだということを社会に示すミッションもあると思います。
  • 一番辛かったことは「悩んでいる」ということを人に話せないことでした。そんな孤独感を解消したくて活動をはじめました。活動を通して、私自身が人生のできごとを受け入れていくことと、自分たちが成長(変化)していく姿を周りの人たちに見てもらいたいと思いました。いまは活動を休んでいますが、それをマイナスに捉えずに変化の一つとして楽しんでいます。


SHGの実際をご紹介するなかで、SHGは多くの方にとって「ひとりじゃない」を実感できる場であると同時に、社会に対してそのありようを問いかける存在であることが改めて見えてきました。また、全ての市民が、ある側面においては当事者であることはもちろんのこと、自分自身の当事者性以外については鈍感になる可能性についても言及されていました。


市民社会の実現にとって、「当事者」のもつ経験や言葉は不可欠なものとなっています。一方で、社会や地域との関係・摩擦・無理解によって生み出される偏見や生きづらさ、「当事者性」も多くあります。それらの解消や、社会のありよう自体を変えていくことを、「当事者」活動だけに担わせることのないよう、社会全体がSHGへの理解を深め、市民一人ひとりが「当事者」として、SHGが活動しやすい環境づくりに寄与していくことが求められています。


(相談担当専門員 森玲子)『ネットワーク』359号・360号を改編(2019年)