市民社会をつくるボランタリーフォーラムTOKYO 2020

セルフヘルプグループにききました
「運営のこと、みんな、どうしてる?」

「一部のメンバーに負担が偏ってしまう」

「資金がなくて会場を借りるのも大変」

セルフヘルプグループ(SHG)の運営上の悩みは、グループのテーマに関わらず共通するものが多くあります。運営上の課題と工夫について、SHG39団体にききました。


活動していて「大変だな」と思うこと

  • 市民活動経験がない人が多く、資金調達や運用のスキルが乏しい。
  • 住んでいる場所がバラバラなので、公的施設や安価な会場が利用しにくい。
  • 活動テーマが助成対象になりづらい。
  • コアメンバーの多くは障がいや病気をもつ当事者であるため、体調により活動が不安定になる。
  • (介護の終了・病気の回復など)抱えている問題が解決したり、状況が変わると辞めるメンバーが多い。
  • 昼夜を問わず相談の電話が入るが、当事者同士その苦しみがわかるので応じてしまい、休めない状態が続いている。
  • 個人の集まりなので団体への信用が得られにくいが、NPO法人化へ踏み出す勇気がない。

そのほか、多くの市民活動団体に共通する課題も多く挙げられています。具体的には、資金不足、人材不足(メンバーの高齢化、世代交代・人材育成ができていない)、活動場所・事務所がない、運営メンバー間の負担の偏りやコミュニケーションが円滑にいかない、会員の減少、広報の効果がないなどです。

なかでも多かったのが、「資金」と「活動メンバーの不足」です。半数以上のグループがどちらか、もしくは両方の課題を感じています。グループのおもな収入源は、会費(25件)、寄付(19件)、助成(18件)、事業収入(15件)でした(複数回答)。


運営上、工夫していること

  • 「できるときに、できる人が、できることを、少しずつ。ドタキャンもOK」で、みんなで協力し合って活動している。
  • 一部のメンバーが負担を感じることがないように、自分の抱える事情をそれぞれが最優先することにしている。
  • できること・できないこと、やりたいこと・やりたくないことをはっきりさせる。
  • 「同じ悩みを持つ」といっても各人で状況は異なるので、メンバーの状況把握をできるだけするようにしている。
  • メンバー間の関係が悪化するより別グループをつくるなどの選択を早目に提案する。
  • お互いの思っていることや起きていることがわかるように、クローズド(メンバー限定)の掲示板やLINEを利用して、コアメンバーの情報共有をしている。
  • 自分の気持ちを話しやすい雰囲気をつくるため、「当事者」と「家族」をわけて懇親会をしている。
  • グループの外の力を借りてお互いに助け合えるよう、地域のさまざまなNPOとの連携を模索中。
  • 当事者ではない人からも資金を募れるように、賛助会員(応援するために会費を納めてくれる人)を募集している。

悩みで多かった「資金」と「活動メンバーの不足」について、様々な工夫がされています。特に「無理をしない」ことや、「風通しをよくする」ことを心掛けているグループが多くみられました。

SHGは一人ひとりの「必要」から生まれ、当事者の力で活動が続いていきます。仲間との出会いや支え合いの実感、ときには社会に向けて一緒に声を挙げることができるようになるなど、活動の先には大きな広がりとエンパワメントがあります。しかし、運営を継続する中で課題に直面することも多く、どの団体も悩みながら、工夫を生み出しながら活動をしています。アンケートからは、他団体の取り組みを参考にしたり、グループの外の力を活用したりしながら無理なく運営できるように試行錯誤している姿がうかがえました。今、SHGに参加していない人も、寄付をしたり、賛助会員になって応援したりなど、側面からできることもありそうです。


森玲子(相談担当専門員)『ネットワーク』