市民社会をつくるボランタリーフォーラムTOKYO 2020

黄金(こがね)ネットワーク(障がい児の父親の会)

「黄金ネットワーク」は、酒席に集った障がい児の父親たちが、「父として何かできることはないか」と話し合ったことから始まったグループです。

子どもの催しだけではなく、大人向けの企画を立てたり、地域の人たちの協力を得ながら、行政に働きかけるなど、幅広い活動をしています。父親たちの活動の軌跡について伺いました。


はじまりの物語 ~夏の宿泊訓練をきっかけに~

1999年、小金井市立ピノキオ幼児園(当時。就学前の障がい児が通う通所訓練施設)の宿泊訓練後の飲み会で出会った、4人ほどの父親たちと彼らを応援した幼児園の先生の協力により、子どもと家族が一緒に楽しめるクリスマス会が開催された。このクリスマス会を契機に、後に障がい児の父親の会である、黄金ネットワークができた。現代表の景山 さんは2000年から参加している。「当時からのメンバーの子どもは20歳くらいになっています。子どもの成長に合せて、活動も変えていこうという声もありましたが、小さな子ども達が対象のクリスマス会は変えずに実施しています。少しずつ、身体障がいのある人や軽度障がいの人など、色々な人が参加するようになってきました」。現在では100名を超える人が参加する一大イベントとなっている。


顔見知りになって、「ゆるやかなネットワーク」をつくる

黄金ネットワークの活動はクリスマス会だけではなく、大人向けの勉強会や小金井市内の障がい児の家族をはじめとしたネットワークづくりなど、多岐に渡っている。

「大人向け勉強会としては『障がい児・者支援セミナーこがねい』を実施しています。また、発達にアンバランスのある子どものお母さんのグループや東京学芸大学の協力をいただきながら、意見交換会『この子の困りごとはなんだろう?』をこれまで11回開催しています。この会には、当事者ご家族の他、行政、社会福祉法人、就労支援の関係者や東京学芸大学関係者などの方に参加をいただいています」

会の前半では講演があり、後半に「車座トーク」として参加者30人くらいが円になって一言ずつ、しゃべる。秘密は絶対守るというルールのもと、信頼関係ができ、自発的に活発な話のできる場となっているようだ。

こうした勉強会や意見交換会のきっかけは、黄金ネットワークのメンバーの子どもたちが通っていた、ピノキオ幼児園の移転・建て替えと民間委託の検討が背景にあった。「周辺の自治体の発達支援施設約10カ所との比較調査をしました。すると、小金井市が最も環境が整っていないことがわかったのです」。そこで、黄金ネットワークからの働きかけに行政が応える形で、広く市民に参加を呼びかけた意見交換会形式で小金井市の関係部署との話し合いを約20回行った。「一方的に市に訴えるということよりも、建設的な議論を意識しながら会をもちました。仕事を経験した父親たちの考え方です」。途中からはお母さんグループや近隣の障がい児施設の園長にも協力を依頼して進めていったという。

「それぞれの立場で状況や考え方がバラバラで議論が収束しなかったため、お互いの違いを認めた上で、まずは共通のことを共有して、協力しようということになりました。その前提としてなにより大切なのが参加者同士の信頼関係です。だから、今の意見交換会でも目的の第一は、地域で顔見知りになって、ゆるやかなネットワークを作ることなんです」。このように障がいの程度や種類が違う親の会が協力して活動している事例も珍しいとのことだ。

意見交換会を始めて3年後の平成25年10月には、ピノキオ幼児園が建て替えられ、設備と事業の整った児童発達支援施設「きらり」が開設された。市外からも見学者が訪れる施設となっているという。


父親の活動のための土壌を

今後の課題として、「自閉症スペクトラムなど、発達障がいの理解を広めることが1つです。小中学校の先生方の理解を深めたいと思っています。保育士も理解できていない人もいるのが現状です。だから、クリスマス会では、保育士を目指す学生ボランティアの受け入れをしています」。

また、現在、黄金ネットワークには父親以外も含め約20人のメンバーがいるが、中心として活動している人は約6人だという。「以前から障がい児者の会はほとんど母親が中心メンバーで、今でも父親の会は新しくできないんです。黄金ネットワークにも新しい人が入ってこない。やはり父親は忙しくて余裕がないのかなとも思います。クリスマス会には参加する人もいるけれど、家族の理解が必要な発達障がいなどに対して関心を持てない父親が多い気がしています」。発達障がいという言葉が広く知れ渡った昨今でも、まだまだ必要な人に細かな情報が伝わっていない、または受け入れるための土壌が整っていない現状がうかがえた。


父親だからこそ、気づくこと、できることがある!

「我々は余暇には酒が飲めたりスポーツもできるけど、障がいを持つ彼らは、余暇の過ごし方がわからない。だから、今後の長い人生、帰宅後と週末に楽しめる何かが必要だと思っています」。景山さんの息子さんは、重度重複の知的障がいで 時間を持て余すと布を振るなどの触感遊びや自傷行為にふけることが多かった。今では、景山さんは毎週末一緒にプールに通い、音楽療法に取り組んでいる。音楽は10年以上やっていて、「最初はリズムを楽しむだけで精一杯だったけど、最近では複雑なメロディも分かるようになり、クラシックやポップスを楽しんでいます」。

景山さんのお話しからは、子どもの生活に気づき、課題の解決を探るための父親ならではの視点や考え方が随所に垣間見えた。


黄金ネットワーク(障がい児の父親の会)

https://www.facebook.com/koganenetwork/

https://koganenetwork.blogspot.com/

小金井市ピノキオ幼児園父親の会を母体として発足。障がい児・者が暮らしやすい地域の実現を目指し、父親の立場から地域や行政に働きかける事を目的とする。


キーワード 障がい児、障がい児の父親、地域ネットワーク

メンバー 障がい児の父親

サポートメンバー(賛助会員) どなたでも

活動内容 定例会、年数回のイベント、障がい児・者支援の意見交換会・勉強会

活動エリア 小金井市

相談 あり

集まれる場 あり

他団体との連携 あり

連絡先 koganenetwork@gmail.com

*『ネットワーク』352号より(2018年2月発行)