市民社会をつくるボランタリーフォーラムTOKYO 2020

セクシュアルマイノリティと
精神疾患の自助グループ
にじのこころ

「にじのこころ」は、セクシュアルマイノリティと精神疾患の自助グループとして、2012年にスタートしました。セクシュアルマイノリティとは日本語では「性的少数者」といい、Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、Transgender(トランスジェンダー)、intersex(インターセックス)、Questioning(クエスチョニング*)などの人をいいます。

セクシュアルマイノリティの人も、精神疾患のある人も、セルフヘルプグループをつくったり、カミングアウト(自ら表明)することが増えてきています。一方で、セクシュアルマイノリティと精神疾患の両方を抱える人は、どちらのコミュニティでも声を上げづらい状態にいます。にじのこころは、両方を抱える人同士がつながり、お互いの苦しい胸の内を語り合える場所をつくろうと、「当事者」がたった1人で始めたグループです。

にじのこころを立ち上げ、現在、代表を務めている、ますみゆたかさんにお話をうかがいました。


はじまりの物語 インターネット上で発信

私は、セクシュアルマイノリティであることを言えず、生きづらさを感じていました。

パートナーを亡くしたとき、先方の親に打ち明けることができず、葬儀には友人として出るしかありませんでした。喪失感から、うつ病になり、ダブルの生きづらさを抱えることになります。けれども、セクシュアルマイノリティ、精神疾患のどちらのグループでも、両方抱えていることは言えませんでした。自分のような人間は、身の置き場がないのではないか……と考え、自ら呼びかけることにしました。

2012年、SNSで発信しました。インターネット上でのメンバーが、初めて集まったのは2013年1月。

10名くらいが参加し、それから「グループ」として活動することを意識するようになりました。

現在のおもな活動は、情報発信(SNSなど)、つながりづくり(チャットや掲示板など)、交流(にじのこころカフェなど)の3つです。


にじのこころカフェで場づくりを

にじのこころカフェ(以下、カフェ)は、2014年9月から毎月開催しています。ここでは、仕事や家族、恋愛のことなど、日々の出来事や困っていることを話し合っています。

カフェでは、同じつらさを抱えた人同士がリラックスして話せるというだけでなく、生きづらさを軽減するヒントを得たり、自分にはなかった他の人の課題や悩みを知ったりと、新鮮な気づきを得ることができます。たとえば、うつ病と統合失調症は、症状や困りごとが異なります。それぞれが経験した情報を蓄積して、これからの生き方に役立てるような場所にしていくことを目指しています。

といっても、いわゆる「雑談の場」なので、途中参加したり時間前に退席する人もいますし、聞いているだけという人もいます。また、セクシュアルマイノリティや精神疾患だけでなく、発達障害や依存症当事者、HIV陽性者など、さまざまな生きづらさを感じている人が自分のことを話せる場所づくりを少しずつ広げています。

カフェは、回数を重ねるうちに、参加者が準備を手伝ってくれたり、進行をしてくれたりするようになり、運営しやすくなりました。

その他に、花見やカラオケ大会など、お楽しみ企画も催しています。


セルフケアあってのセルフヘルプグループ

たとえば、精神疾患の人から「状態が悪くなったときに、どうしたらいいか」など、相談を受けることがありますが、傾聴や雑談は行うものの専門的な相談は受け付けていないことをお伝えし、別のグループや医療機関のご紹介をしています。

自身も「当事者」だからこそ、そうした悩みはわかるし、何とかしてあげたい気持ちはありますが、重要な相談を自分のキャパシティ以上に数多く受けてしまって、自分の心身を疲弊させてしまったら、活動が続けられなくなってしまいます。同じ生きづらさを抱えた人が身を置ける場を、細くても長く続けるためには、線引きが必要でしょう。

自分の体を大切にすること、「セルフケアあってこそのセルフヘルプグループ」だと考えています。


就労の問題を考える 新たな取り組みを!

4月29日に、「セクシュアルマイノリティ×精神疾患 当事者が語る『就労の問題』」というイベントを開催しました。

会社にいづらくなって離職したり、カミングアウトすると職に就きづらい、といった声が少なからずあります。そこで、「当事者」や企業に昨年からアンケートを取ってきました。そのアンケートからポイントをまとめて、「当事者」と、企業や就労移行支援事業所の取り組みとのギャップがどこにあり、その溝をいかに埋めたらいいかを、参加者とともに考えました。

これをキックオフ・イベントとして、今夏には、「当事者」と企業、就労移行支援事業所との出会いの場をつくる予定です。


* L、G、B、T、I、Qこれらのうち、とくにIとQは定義が統一されていないため、本誌ではあえて解説を入れないこととする。


セクシュアルマイノリティと精神疾患の自助グループ にじのこころ

https://lgbtnijinokokoro.wixsite.com/nijinokokoro


キーワード LGBT/精神疾患

セクシュアマイノリティと精神疾患を抱える人たちにとって、これからの生き方に役立つ場づくりをめざす

メンバー 当事者

活動内容 情報発信、交流、ネットワーキング

活動エリア 23区内 相談 なし 集まれる場所 あり

他団体との連携 あり

連絡先

*『ネットワーク』342号より(2016年6月発行)