市民社会をつくるボランタリーフォーラムTOKYO 2020

Tokyo Deaf LGBT bond(トウキョウ デフ エルジービーティー ボンド)

「Tokyo Deaf LGBT bond」は、LGBT*1の基礎知識を伝え、LGBT手話啓発、主に「ろう」で「LGBT当事者」の相談を行っている団体です。代表のかえでさんにお話を伺いました。


はじまりの物語 ~聴覚障害者協会での経験を活かして~

かえでさんが、LGBTでろうの方の相談の受け皿が必要と思っていたときに、大阪で活動していた山本芙由美さんに「東京はどうですか?」と聞かれたことがきっかけで立ち上がったのがTokyo Deaf LGBT bondだ。

団体名のdeafは英語でろうを意味しており、bondは日本語だと絆を意味する言葉だ。日本語より英語の方が表現しやすいため、このような団体名となった。

2014年10月から活動をしているが、その当時、「カミングアウト*2していた聴覚障害のあるLGBT当事者として知られていたのは、モンキー高野さん、菊川れんさん、私の3名でした。しかし、その後は徐々に増えてきており、それは非常にうれしいこと」。とかえでさんはいう。

団体設立前、かえでさんは、調布市の聴覚障害者協会(ろう協)で6年間会長をしていた。「その頃に得た経験やノウハウがあるから、今がんばれています」


自由に集まれる場

活動内容はLGBT手話通訳者研修を全4回行い、歴史や言葉の意味など、知識を深めている。同時に市民への啓発を行い、当事者相談を受けている。さらにLGBT当事者として講演などに出向いている。

活動方針として、会員を集めるというよりは「自由に集まれるように」しているという。ルールにしばられずに、例えば、「東京でパレードがあるよ」と呼びかけて集まれるようにしているそうだ。

当事者相談については、基本的に「LGBTと、ろう」というテーマで受けている。ただし、聞こえるけど話すのが苦手な人からも文章での相談を受けている。しかし、「メールのやり取りでは限界があり、伝わらないこともあります。特に遠方の人は時間が合わずに会えないと難しいですね」。地方では相談しにくい状況がまだありそうだ。

団体として情報はたくさん持っているので、他の団体やイベント等につなげるなど、コーディネーターの役割を担っている。

「ろうでも手話で話せる人を中心に活動をしていましたが、話すのが苦手な聞こえる人も少しずつ増えてきました。ただ、団体としては手話を大事にしています」。


男だから、女だからと言わなくてもいい社会を

「今後はLGBTをより、皆に深く知ってもらうために、アライ*3を増やしたいと思っています」。手話通訳者の講座もアライの方向け、LGBT当事者向けと2種類行っている。情報はホームページやFacebookに掲載されている。

「LGBTにはどんな人がいるかの理解を深めてもらいたいと思います。ゲイなどの言葉は一般的に知れ渡っていますが、例えば、好みのタイプとしてジャニーズ系やクマ系、スジ筋(きん)といったいろいろな人がいることなど、もっと具体的なことを講座形式で知ってもらう機会を設けたいですね」。

最後にかえでさんが願う将来像を伺った。「世の中にはいろんな人がいて当たり前ですよね? 現状の社会の認識を変えていきたいと思っています。男だから、女だからと言わなくてもいい社会が実現できれば『Tokyo Deaf LGBT bond』はいらなくなります。そうなればいいなと思っています」。


*1 「L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシュアル、T=トランスジェンダー」の頭文字をまとめた略称。

*2 英語では基本的にLGBTの人が、自分がそうであると誰かにいうこと、あるいは公表することを指す。日本では、これまで隠していた自らに関する事実を公表するという広い意味で使われている。

*3 ally。英語で「仲間」「支援者」「連帯者」を意味する言葉で、自身はセクシュアルマイノリティではないが、理解し寄り添い、支援するという人たちのこと。


Tokyo Deaf LGBT bond

https://tokyodeaflgbtbond.jimdo.com/

https://www.facebook.com/tokyodeaflgbtbond/

聴覚障害者による聴覚障害者のための当事者団体。LGBTの基礎知識啓発、LGBTに関する講演、手話指導、当事者相談、手話通訳派遣事業などの活動をしている。


キーワード ろう・LGBT当事者

メンバー 当事者/支援者

活動内容 相談、啓発活動、情報提供、LGBT手話通訳者研修、手話通訳派遣事業、他

活動エリア 都内中心に全国

相談 あり

集まれる場 あり

他団体との連携 あり

連絡先 keifu.408@gmail.com

ホームページの問い合わせフォームからも問い合わせ可能

*『ネットワーク』348号より(2017年6月発行)