「TVACに寄せられたコロナ関連の相談」概要(2020年2月〜2021年3月)
2021年6月
東京ボランティア・市民活動センター 相談担当まとめ
コロナに関する相談が寄せられ始めた2020年2月から2020年度末(2021年3月)にかけて、TVACに寄せられた相談件数は20,444件ありました。そのうち新型コロナウイルス(以下、コロナ)に関連した様々な相談は11,044件にのぼり、相談件数全体の半数以上、54%がコロナに関連した相談、コロナの影響を受けた相談でとなりました。
TVACに寄せられた、コロナ関連の相談の概要をご紹介します。
コロナ関連の相談内容の内訳
2020年2月~2021年3月におけるコロナ関連の相談: 11,044件
以下、内訳ごとに概要をご紹介します。
「NPO法人の運営」についての相談(5012件)
- NPO法人に関しては、設立・運営・報告・会計など、相談内容は多岐にわたるが、コロナに関連して最も多く寄せられた相談は、「総会」運営とそれに関わる「定款」に関すること(約400件)、「理事会」関係(200件以上)であった。「オンライン参加でも総会に出席したとみなせるか」「遠方からの会場参加は控えるようにお願いすることは可能か」など、開催方法についての相談が多く寄せられ、「集まることの自粛」が求められる状況下で、どのように手続きを進めていけるのか、多くのNPO法人が頭を悩ませていた。
- 総会については、内閣府等から発信されている情報と併せて、自団体の定款、組織の状況によって実施可能な開催方法を探っていくことになる。「うちの法人の定款では、どんな議決方法が可能か」「定款を変更して、今後もオンライン会議ができるようにしたい」などの相談も多くあった。
- 同時に、「コロナに対する意識が個々で異なり、組織がバラバラになってしまった」「事業を中止するかどうかで意見が分かれて、複数の理事が辞任してしまった」など組織運営の混乱や「NPO法人なのだから、このような難しい状況では話し合いを大事にしたいのに、書面表決や委任状を駆使して会議を成立させることばかり話題になり、疑問を感じる」などNPO法人を取り巻く状況への戸惑いや危機感を耳にすることも多くあった。
- 2020年度前半は、多くのNPO法人が通常の事業の中止や縮小、方法の変更を余儀なくされ、事業収益を中心に大きな減収となった。「解散」に関する相談も50件近く寄せられた。解散の主な理由は財政面だが、一部にはメンバーの高齢化等により「以前から解散を検討していたが、コロナを機に決めた」という法人もあった。悩んだ結果存続を選んだあとも「固定費だけが出ていく状況で、あと半年が限界」「事業再開したものの、参加者が集まらず、このままでは人件費も出せなくなる」など、厳しい状態が続いている法人もある。
- 一方で、認定NPO法人の申請・手続きに関する相談は大きく増加し、430件近く寄せられた。認定相談の背景にもコロナの影響がみられ、「事業ができない期間に、認定申請の準備をしたい」「いつまたコロナのような災害がくるかわからないので、認定を取得し、組織基盤を厚くして備えたい」などの理由で認定を目指す法人が増加。同時に、相続財産の寄付・遺贈や土地建物などの現物資産の寄付に関する「寄付したい、受け入れたい」相談も増加した。
- 新規に「NPO法人を立ち上げたい」相談も300件以上あった。多くが「コロナで浮き彫りになった社会課題のために法人設立したい」という相談だったが、なかには「コロナで失業したのでNPO を立ち上げて自身の生業にしていきたい」といった相談もあった。
相談例
- 定款上可能な、総会理事会の開催方法について知りたい
- オンラインを活用した会議や事業を検討したい
- 事業ができない期間を活用して認定申請の準備がしたい
- 個々でコロナに対する危機感や意識が異なり、組織がバラバラになってしまう…
「任意団体」に関する相談(1501件)
- 任意団体からは、運営・活動に関する幅広い相談が寄せられた。特に、オンラインを取り入れた活動についてと、当事者団体の活動に関する相談が多く寄せられた。当事者団体の活動に関しては、300件以上寄せられている。
- 小規模の任意団体に関しては、固定費がないところも多く、活動中止の決断をすることで「組織維持」に関するダメージを受けない団体もあった。
- 当事者団体からは、感染リスクの高いメンバーがいるなどの理由で、早い段階から「活動を中止したほうがいいか」「オンラインで自助活動を実施することの可能性」などについての相談が寄せられた一方、「仲間と切れたら孤立してしまう」という理由で、緊急事態宣言期間になるギリギリまで対面での集まりの実施について悩んでいた団体もあった。その後「オンラインで当事者の集まりをしたい」相談が増えたが、「隣の部屋に家族がいると話せない」仲間がいること、さらには「ネット環境がない」などオンライン参加が難しい人が少なくないことも課題となった。対面の集まりが難しい状況が続く中、当事者会の主催者は仲間の孤立を危惧しながらも、「集まること」への社会からの批判、そして「当事者」への偏見や圧力への恐怖から、対面の再開に踏み切れずにいる声も寄せられている。このような状況下においても「なぜ、当事者活動を続けるのか」について、団体内で議論を深めた団体もあり、2020年は自助活動をしているグループにとって、大きな転換や決断を迫られた1年であった。
- 実務的にはオンラインでの活動がすすみ、それに伴い参加費徴収の問題が生じ、「法人格がなくても利用できるオンライン決済」についての相談が多くあった。
- 2020年夏以降、それまで閉鎖していた公的施設、貸し会場等が徐々に再開したが、感染発生に備えた情報の提供を求められるようになったケースも多い。ハードルを下げるために当日参加を受け入れていた活動や、自助活動などをしている団体から、「匿名参加を前提としていた活動への影響」なども多くの団体から相談があった。
- 法による運営の枠組みがあるわけではない任意団体にとっては、一人ひとりのコロナに対する考え方が異なる状況で組織としての方向性を見出していかなくてはならず、多くの団体にとって、合意形成や意思決定が難しい1年となった。「意見がまとまらず、孤立してしまった」「メンバー間に亀裂がはいった」などの声が寄せられ、それを仲介・調整するリーダーが「疲れた」とこぼす場面にも遭遇した。多くの市民活動団体は「想い」でつながる集まりであり、コロナはそういった人間関係にも大きな影響を及ぼしていた。
- 一方で、新しく団体を立ち上げ社会課題に取り組みたいという相談も複数あり、未曾有の事態の渦中にありながらも「必要だからやる」という熱意と、新たな狭間に素早く柔軟に対応しようとする市民活動の力を感じた。
相談例
- こども食堂・フードバンクの活動を始めたい
- 再開したいが、活動で感染が発生したときのリスクを考えると強行できない
- どうやって会員のモチベーションを保っていけるか
- オンラインができない方が、つながりから抜け落ちないための工夫
TVAC関連の問い合わせ等(1047件)
- TVACの開館状況、TVAC会議室や印刷室が利用の可否、換気やWi-Fiなど施設・設備の環境についての問い合わせや、コロナにより会議室の利用キャンセルなどの連絡が多くあった。
- 新型コロナ対応の「ゆめ応援ファンド特別助成」や「夏のリモートボランティア」など、コロナに対応する主催事業への問い合わせがあった。
- 他のNPOの活動状況や、TVACの運営相談はオンラインで対応可能かなど、情報提供・相談に関わる問い合わせも多く寄せられた。
活動についての相談(活動を進めていく上での相談)(958件)
- 1年間を通じて多く寄せられたのは「事業やイベントの実施について」であった。「活動ができない」「助成金の計画通りに実施できない」などの相談が多くあった。その背景の多くに「場所」の問題があり、多くの団体が公共施設を利用して活動していたため、緊急事態宣言等で施設が休館になったり、会場の貸し出しが中止されたことに伴い、活動場所を失う団体が多く発生した。コロナ禍においてニーズが拡大したにも関わらず、場所の確保ができないために事業ができなくなった団体もあった。なかには通常の活動ができなくても、食事をお弁当配布に切り替える、さまざまな工夫をして「つながり」を保つ事に注力する、大人数が集まらない形で実施した団体もある。そのような団体の取り組みに対する関心は高く、「他団体の活動状況を知りたい」相談が多く寄せられた。
- 早い段階から、オンラインやハイブリッドで活動する際のポイントや注意すべき事項などへの問い合わせが多くあった。2020年後半に入ると、活動を再開する団体も増えてきた。資金難を乗り切るためのクラウドファンディングの活用や、オンラインを取り入れる際の著作権などの法的な留意点に関わる相談も寄せられた。また、事業を行うにあたり「市民活動における感染対策のガイドラインはあるか」「参加者の健康状態や、万が一のための家族の連絡先などの個人情報をどこまで求めていいか」「ボランティア合意書をコロナを踏まえたものに変更したい」などの相談が寄せられた。
- コロナにより新たに発生した社会課題や、浮き彫りになった問題等に対して、新たにプログラムを開発する相談、この状況下におけるボランティアの募集や受け入れについての相談もみられた。
- 多くの相談において、コロナの影響により困難に直面している状況や、思ったように活動できないジレンマや不安、悩みなどが見られた。
相談例
- 助成金に申請した事業ができない
- オンラインでできる活動ではなく、どうしたらいいか
- 参加者の個人情報・健康に関する情報について、どこまで聞いていいのか
- コロナ禍でも参加できる、新たなボランティアプログラムを開発したい
- 団体のクレジットカードがないので、助成金事業の買い物を、個人のクレカでしてもいいか
団体の「資金」に関する相談(921件)
- コロナ禍により活動ができないことで、会費や寄付金収入、事業収入が減少してしまい、組織の維持が難しくなったという声が多く寄せられた。資金の種類としては、助成金に関する相談が一番多くあった。2020年後半には、クラウドファンディングの相談が増加した。
- コロナ対応の公的支援に関する相談も多く寄せられ、特に持続化給付金には高い関心が寄せられ「うちの法人は対象になるのか」「どこの数字で判断すればいいのか」などの相談が多くあった。一方でこれらの支援策は、一定の条件に基づいて対応されるものであるため、独自の方法で会計処理をしている法人などは、そのままでは要件を満たせないことも多くあった。コロナの支援策の活用については、日頃の法人運営の状況が大きく影響したといえる。
- また、ネットショッピングが身近になったことにより、クレジット決済への対応(証憑について、クレカ利用による立替の精算について)など、新たな相談も目立った。
相談例
- 活動ができなくなり、収入がなくなった
- 組織の維持(運営費)に使える助成金を探している
- オンラインにしたら全国からの申し込みが増えた。でも「東京の活動への助成金」を受けている…
- 任意団体だが、オンライン決済を取り入れたい
「ボランティア活動・市民活動に参加したい」相談(716件)
- 在宅時間が増えたことにより、在宅やオンラインでできる活動がないかといった相談が増加した。具体的な活動分野・活動内容としては、「子ども食堂」「学習支援」「フードバンク」「生活困窮者への支援」などが多く寄せられた。漠然と「何かボランティアをしてみたい」という相談も多数あり、特に、2020年の夏以降に増加した。
- 同時に「コロナで失業してしまったのでボランティア活動をしたい」「今までやっていたボランティアが中止になったので他の活動を探したい」などの相談も寄せられている。
- あわせて、コロナで困っている人や活動に、寄付やマスク、食料品等の寄贈をしたいといった相談も多く寄せられた。
- コロナ対応を行っている医療従事者に関連するボランティア活動への問い合わせも複数あった。
「ボランティア活動・市民活動についての情報提供・募集」について(472件)
- コロナ禍で、他の団体がどのように工夫しながら活動を継続しているのか、新たな取り組みの事例を知りたいなどの相談が多くみられた。
- 2020年の夏以降、生活困窮に陥った方などから、フードバンク、フードパントリーをはじめ、炊き出し、食事の支援を行っている団体の情報を求める相談が多く寄せられた。
- NPOからの「ボランティア募集」に関する相談は、2020年の前半まで0件であったが、後半に入り、50件近くの相談が寄せられるようになった。
- 活動を行う上で、ボランティア保険がコロナに対応しているかなど、リスクマネジメントの観点から保険に関する問い合わせが増加した。
相談例
- 他団体の状況、NPOのニーズを知りたい
- 食事の支援をしてくれるNPOの情報を知りたい
- コロナで外に出ていない。買い物を代行してくれるボランティアはいないか
- コロナの影響でガイドヘルパーが見つからない。ボランティアを探したい
その他(417件)
- 個人の方を中心に、様々な相談が寄せられた。コロナは、人々の生活における、経済的な面だけでなく、精神面にも大きな影響を及ぼしていることがわかる。
- 支援活動をしているNPOからは、「ケアラーズケア」の必要性を訴える声も寄せられた。