学校と地域と一緒につくろう
福祉教育・ボランティア学習

子どもの声をきこう

福祉教育と子ども

子どもにとって「福祉教育」とはどのようなものでしょうか?

子どもが地域や福祉について学んだり、体験を通して福祉的なこころを身につけたり、もしくはまちに対して貢献できることを知るといったことが思い当たるかもしれません。それらはいずれも福祉教育といえますが、福祉教育における教育の矢印が「大人→子ども」「先生→生徒」「専門家→素人」となっていたら、それは福祉教育としては不十分でしょう。

福祉教育の学びとは参加する人の間で双方向に育まれるものです。立場的に「教師」と「生徒」や、「支援を届ける人」と「支援を受ける人」という関係性はあるかもしれませんが、福祉教育の場を通してそうした立場性が更新されることが重要になります。


子どもの声とは

双方向の学び合いということは、福祉教育に参加する子どもの声に耳を傾けることが重要になります。しかし、子どもの声をただ聞けば良いということではありません。

「参画のはしご」と市民学習推進段階チャートのページが参照しているロジャー・ハートの『子どもの参画』では、子どもの声を聞かずに大人が用意したメッセージ(福祉的なメッセージなど)を子どもに語らせたり、大人が用意したシナリオに基づいて子どもが内容をよく理解しないままに発言したりすることは、「欺きの参画」や「お飾りの参画」として批判されます。

また、子どもが発言する場で、大人にとって都合の良い発言をする子どもが選ばれている状況は「形だけの子どもの参画」であり注意が必要です。

本当の意味で子どもが参画するためには、子ども自身が企画段階から関わり、企画を通して子どもの声が企画に反映されることが重要です。そのような取り組みを通して、大人や教師も学びや気づきを得ることが期待されます。


子ども中心の社会に向けて

2023年4月に施行されたこども基本法において子どもの意見表明機会の確保・子どもの意見の尊重が基本理念として掲げられるとともに、施策の策定等にあたって子どもの意見の反映に係る措置を講ずることが国や地方公共団体に義務付けられました。このことは、福祉教育の内容やそのあり方を検討する際も、子どもの意見を反映することが重要になることを意味しています。

ハートの著書には子どもの意見を反映させる様々な取り組み例が示されています。同様に日本国内においても、先進的な事例がこども家庭庁の調査報告書に掲載されていて、参考になります。

福祉教育のプログラムを検討する際、それらの事例などを参考に、子どもの意見を反映する方法を考えてみましょう。例えば、福祉教育で取り扱うトピックを教員や社協職員だけであらかじめ決めることも大事ですが、その前に子どもたちの問題意識を確認するところから始めることも可能です。

その際に、子どもたちには難しすぎるのではないかという懸念や、家庭の問題など、他の子どもに触れられたくないことや性自認などのセンシティブな問題が話題に上がってしまうといじめにつながるのではないか、といった懸念があるかもしれません。

どのようなトピックであっても、子どもが安全に対話できる環境を整えることが福祉教育にとっての前提条件です。その上で、社会問題が身近な問題であるという事実に子どもたち自身が向き合い、話し合い、そのことに対して何ができるのかを考えることは、子ども中心の社会づくりにとって重要なことであり、福祉教育に求められる視点です。


参考文献

1)ロジャー・ハート,(木下勇,田中治彦,南博文監修)『子どもの参画 - コミュニティづくりと身近な環境ケアへの参画のための理論と実際』,2000年,萌文社.


(文責 室田信一/東京都立大学)